M.M Campus Notes vol.2


 この「Campus Notes vol.2」は先に発売された「Campus Notes vol.1 Re:Birth」の続きとなっております。その為レビューには「Campus Notes vol.1 Re:Birth」を含めたネタバレが含まれていますので、ネタバレを避けたい方は避難して下さい。

・「Campus Notes vol.1 Re:Birth」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。


→Game Review
→Main

以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。





















































































<人間かロボットかなんて関係ない。大切なのは「存在としての彼女」なのだから>

 筑波大学に編入し、そこからリスタートして自分の目的を見つける物語を描いた「Campus Notesシリーズ」の第二弾です。vol.1で描かれた筑波大学愛に溢れた設定はvol.2でも衰えることはなく、むしろ食べ物の記述等においてはよりパワーアップした傾向が見られました。ですがシナリオはvol.1からの純粋な続編という訳ではないと感じました。言ってしまえば、vol.1とvol.2ではテキストが違っておりました。

 vol.1では近未来視聴覚研究会(きんしけん)に入部しそこで出会った新たな出会いの中で自分の目的を見つけていきました。vol.2では少し変わったバンドに入りその中で自分の目的を見つけるという事で一見同じに見えます。ですがvol.1は主人公とヒロインの心の触れ合いやシナリオの進行をどこか論理的と言いますか積み木を積み上げていくかのように段階を踏みながらステップアップして読む事に面白さを感じてました。ですがvol.2ではそのようなステップアップは感じられず、基本的に先の見えない主人公とヒロイン達の心の有り様を無様にさらけ出すようなテキストでした。これは本当に同じシリーズものなのか?全く別のシナリオライターが書いたのか?と思った程です。だからこそ、開始2時間程度で私は論理的に読むことを半分やめ、出来るだけ主人公とヒロインの心情を嗅ぎつけようと意識しました。

 vol.2の最大の特徴はやはり雪丸四駆の存在です。人間ではないロボットである彼女の存在がこの作品の雰囲気を支配しておりました。プレイヤーにとってはさぞ驚いた事だろうと思います。見た目からして奇抜な衣装のヒロインですが、まさかロボットだろうと思った人はそういないと思います。開始早々で簡単にロボットである事が明かされました。そしてその事に対して殆ど気にしていないバンドメンバー、シナリオは当たり前のようにどんどん進んで行きました。プレイヤーの何割の方がこの展開に気後れすることなくついていったのでしょうか。私も頭では理解してテキストを読み進めてましたが、心では「この子ロボットなんだよなぁ」ってずっと想いを抱えてました。何が言いたいのかといいますと、四駆とそれ以外のヒロインで明確に区別していたのです。

 ですがそうした私の読み方に対して「その考えは正しいのか?」という問いかけが向けられました。その問いかけを行ったのは三全音三弦でした。この作品、主人公とヒロインの甘酸っぱいセリフや夢見ているような言葉がよく登場しますので、その雰囲気に当てられると三全音三弦の存在が非常に浮いて見えます。ですがそれこそが4th clusterさんの狙いの1つだったと思います。冷静に考えて三全音三弦の問いかけは非常に真っ当です。人間とロボットでは性行為が出来ない、子供が産めない、寿命も違う、そもそも心のあり方なんて分からない、誰もが普通考える問題だと思います。そしてその問い掛けの先で叫んだ「擬人化するな!」のセリフ、皮肉にも三全音三弦の魂の叫びに思えました。この叫びに対して答えを出さなければいけないのは、主人公だけではなく私たちプレイヤーもでした。

 そして私の答えは表題にある「存在としての彼女」を愛する事に意味がある、というものです。心の在処がどこにあるのかなんて、正直誰も分かりません。かと言って心は人間しか持っていないのかといえば、それは余りにも想像力に乏しい寂しい考えだと思います。例えは、人は犬を飼います。犬は人間を信頼しパートナーとして尽くしてくれるからです。ですがそれは犬に心があるという意味でしょうか?ただ、人間に懐けば食べられると本能で分かっているかたの行動なのではないでしょうか?そしてその答えは、きっと「そんな事考えるだけ無意味」なんだろうと思います。理屈ではないんです、心のあり方に理由なんていらないのではないかと思います。大切なのはそこに存在しているという事。自分にとって確かな存在感を与えてくれるという事だと思います。

 そのことに気づいたとき、私にとって人間とロボットの区別に意味はなくなりました。ただ雪丸四駆が傍にいる、それでいいのではないかと思いました。そしてそのことに気づいたと同時に、このvol.2はそんな存在というものについてこれでもかと語った作品なんだろうなと思いました。論理的なんかではありません。段階なんで踏みません。気が付けば彼女が存在して傍にいる。それだけでした。そしてそれを感じる事が出来れば、きっとこの作品のテーマは理解出来たのだろうと思います。後は彼ら彼女らの物語です。自分たちプレイヤーに出来ることは、この作品を「唯のデータだ」と区別するのではなく「自分のそばにある大切な存在だ」と感じる事なのかも知れませんね。ありがとうございました。


→Game Review
→Main

inserted by FC2 system