M.M 石榴の時計 -漸篇-


<登場人物の見せ方が上手い正統派ミステリー>

 この「石榴の時計 -漸篇-」は、同人サークル「YUKIRINS」で制作されたサウンドノベルです。COMITIA103で同人ゲームサークルを回っている時に初めて知ったサークルでして、歴史物のミステリーという事で最近プレイしていなかったジャンルという事もあり興味を持ったことが購入した切っ掛けでした。感想ですが、正統派のミステリーで登場人物の見せ方が上手い先が気になるシナリオでした。

 タイトルにある石榴とはもちろん果物の「ざくろ」の事です。私の中での石榴のイメージは、赤い果実の中に含まれる更に赤の濃い無数の種が不気味かつ生命力を感じさせるといった感じです。そしてディスクのジャケットにはそんな石榴が潰れて中の種がばら撒かれている様子が描かれております。もうこの描写だけでこの石榴がまるで人間の内臓が飛び出たような様子を連想させますね。そしてこの作品はミステリーです。この石榴の描写だけで何かしら殺人事件に関係するミステリーである事を予感させます。

 この石榴は当然象徴的な存在だけではなくしっかりとシナリオに関係してきます。この作品の舞台はとあるお金持ちの屋敷なのですが、この屋敷には無数の石榴の木が生えておりその石榴に関する言い伝えがキーワードになっております。お金持ちの屋敷という事で屋敷の主人や婦人を始め使用人や親戚夫婦など様々な人物が登場し、これだけで一筋縄ではいかない人間関係を妄想できますね。この辺りも正統派ミステリーと言った感じです。

 主人公は天真爛漫な女性です。そしてそんな主人公と探偵の男性、そして使用人の3人がこの屋敷に伝わる言い伝えと事件に巻き込まれていきます。初めはただの言い伝えであったはずの石榴の話。それがミステリーという形で主人公たちに降りかかってきたとき、本格的なミステリーが幕を開ける事になります。是非プレイヤーの方には登場人物のパーソナリティを理解して頂き、その上で発生する今回の事件について考えを深めていけたら良いのではないかと思いますね。

 今回のディスクはまだ「漸編」ですので物語は完結しません。調度先が気になる展開のところで終わっておりますので早く次回作をプレイしたいですね。プレイ時間としては私で1時間30分といった感じでした。登場人物のパーソナリティを把握し事件の始まりまでシナリオを進めるという構成でしたが調度良い長さだったと思います。何れにしても途中ですので今後の展開が楽しみです。ただ1つ残念な点がありまして、テキストウィンドウが明るくて文字がちょっと読み辛いところですね。何度もバックログを見て文章を読みなおしながら進めていきましたので、この部分だけは雰囲気よりも読みやすさを優先して欲しかったですね。それでも慣れれば気にならなくなりますのでそれ程プレイヤーの集中度を妨げるものではありませんね。そんな作品でした。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<石榴の演出と正義感の強い主人公がミステリーを楽しむ要素になってますね>

 純粋に物語に引き込まれましたね。丁寧に表現された登場人物のパーソナリティがあったからこそプレイヤーとしても様々な事を妄想する事が出来、それがミステリーとしての醍醐味なのかも知れないと思いました。正直なところ初めに死んだのがあの黒幕っぽいメイドなのは意外でしたが、それだからこそなおこの物語の真実が気になってきますね。

 この物語の鍵を握っているのは間違いなく主人公と探偵の2人ですね。主人公は天真爛漫で正しいと思ったことを突っ走る事が出来る性格ですので、この物語に置いてタブーとされている部分にガツガツと突っ込んで行ってくれそうです。そして探偵も人間味がありながら頭の回転が良く正義感もありますので、やはり核心部分を解き明かすという意味で必須になる気がします。そして2人ともしっかりと第三者の視点で物事を話す事が出来ますので、迷信やタブーにされている部分について論理的に解き明かしてくれそうです。ミステリーというものはファンタジーではなくちゃんと論理的証拠があるものだと思っておりますので、是非その辺りの謎が解明されることを期待したいですね。

 そしてこの物語を盛り上げてくれるのが間違いなく石榴の存在ですね。途中途中に入ってくるカットインがどこか不安な気持ちを煽り平凡に物語が進まない事を暗示させてくれます。それだけではなく石榴が血の象徴として描かれておりますし、第一の殺人で石榴と死体を絡めてくる演出はかなりゾッとくるものがありました。これからも石榴が関係した第二第三の殺人が起きる事を予感させてくれるようです。そして何よりもあの古びた時計台がどのように関係してくるかですね。この辺りは屋敷に言い伝えられている石榴の伝説とも関わってくること間違いなしです。

 何れにしても石榴という象徴的な存在と分かり易い登場人物、そして論理的に物事を解明しようとする主人公たちのパーソナリティなどミステリーを楽しむ要素が盛り込まれていると思いました。まだまだ序章ですのでこれからどのよにシナリオが展開していくか分かりませんが、次回作もこの雰囲気を保ったままであって欲しいと思いました。という訳で次を楽しみにしましょう。


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