M.M そらいろ


<ねこねこソフトの伝統そのままのキャラクター性と雰囲気を生かした王道学園もの>

 この「そらいろ」という作品は恐らくこの業界に属している人だったら知らない人はいないであろう老舗ブランドである「ねこねこソフト」で制作されたサウンドノベルです。ねこねこソフトが2006年10月1日に一端は事実上の活動停止に入った事はこの業界では比較的メジャーな話題であり、二度と新しい作品をプレイすることは叶わないのかと当時の私も悲しみに暮れていました。それ程までにねこねこソフトの作る作品には一貫性があり、作品1つ1つがまさにねこねこソフトという雰囲気をまとっていると思える程でした。そしてまだサウンドノベルが黎明期だった時代にに「銀色」「みずいろ」という作品を発表し、オムニバス形式の普及やいわゆる妹、後輩といった属性の確立という意味でも大きな役割を果たしたブランドだと思っております。この「そらいろ」という作品はそんな活動停止に入ったねこねこソフトの復活第一弾ソフトでした。みずいろで使われていた子供パートから本編への派生という形式、ラムネと同じ舞台、素直な妹とぽんこつとやかましい後輩、佐藤ひろ美のOPとまさにねこねこソフト色満載の作品であり、復活第一弾として相応しい作品だと思いました。

 OHPを見れば分かるのですがこの作品はこれまでねこねこソフトの作品に触れてきた人にとっては懐かしいの一言で言い表せてしまう作品と呼べると思います。タイトルもシンプルな色物ですし、登場人物も過去のねこねこソフトのキャラクターを彷彿とさせます。恐らくシナリオや雰囲気もどこか似ているのでしょう、そんな事が簡単に予想されてしまう作品でした。事実プレイしてみてクスッと来るような描写が多く、ねこねこソフトのファンであれば間違いなく満足できる内容だと思います。そういう意味でこの作品には安心感があり、言ってしまえば無難と呼べる作品に仕上がっていると思います。

 ですがこのそらいろが発売された年は2009年、一端ねこねこソフトが活動停止に入ってから3年経過している訳ですがその間にも新規のサウンドノベルプレイヤーは増えている訳であり、その人たちにとってねこねこソフトはもはや「コットンソフト」の陰に隠れる存在になっているとも感じました。コットンソフトは旧ねこねこソフトのスタッフが立ち上げた新しいブランドであり、どこかねこねこソフトの雰囲気を残しつつも新しい作品を多く世に出し着実に人気を上げていました。そういう意味でねこねこソフトとしてこの余りにも王道であるこの作品にマンネリを感じる人も少なからずおり、これまで通りではなく新しい風を取り入れた方が良いのではないかという声も聞かれました。

 ですがそんな事はありませんでした。このそらいろという作品、確かにこれまでのねこねこソフトの雰囲気そのままではあります。ですがシナリオはこれまで片岡とも1人で書いていたのですが今回はメイン3人で書くことで毛色の違いを感じましたし、システム面は格段に向上しテキストを読むという行為を阻害しない程度のBGMの使い方や演出の妙はこれまで以上でした。そういう意味でこれまでのねこねこソフトの学園ものでは一番の作品と言う事が出来ます。あくまで雰囲気とキャラクター性はこれまでのねこねこソフトの伝統を引き継ぎつつ作品単体としては新しい試みが成されており、まさに新生ねこねこソフトの第一弾ソフトとして相応しい作品でした。

 そんな新しい試みの中でも一番の特徴ですが、子供パートの中で3人のヒロインのうち誰がメインの世界かを選ぶことが出来るのですが、それぞれの世界でもちゃんと3人攻略できるという事です。つまり3つの世界に3人のヒロイン、3×3の9つのシナリオを楽しむ事が出来ます。しかも各世界で微妙にヒロインの態度や性格に違いがあり、同じようなシナリオはありません。まあ3つの世界をそれぞれ3人のシナリオライターが担当しているという事で違いは当然あるのかも知れませんが、同じ舞台でありながらこうまで差をつけてシナリオを仕上げたスタッフは流石だと思いました。このあたりにこれまでのねこねこソフトに無かった試みを感じました。

 という訳でそらいろの感想というよりはねこねこソフトの感想になってしまいましたが、間違いなく人に進める事の出来る安心した学園ものです。これまでのねこねこソフトのファンの方はもちろん、そうでない方でも飽きる事無くプレイする事が出来るのではないかと思っております。夏の雰囲気やキャラクター性が前面に出された作品です。サウンドノベルの良さを是非感じてみてはいかがでしょうか。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<まさか雪希さんを超える妹が登場するとは思わなかった>

 …とりあえず全てのシナリオを終えたのですが、もうね、タイトルの通りですよ。何なんですかあの妹は。確かにねこねこソフトの作り上げる妹は極上品ばかりですよ。みずいろの雪希さんなんてその最たるもので、もうこの路線の妹ではこれ以上のキャラは登場しないと思ってましたからね。それが何ですかね、あの初芝愛衣という妹は!あっさりと私の妹ランキングのトップになってしまいましたよ。

 という訳で妹について語りたいところですがまずは全体の感想ですね。とにかく安心してプレイする事が出来ました。つばめ世界のつばめとかは意外とシリアスでビックリしましたが、担当が片岡ともという事でなんか納得してしまいましたね。まあ、どのみちねこねこソフトの学園もので最後に不幸に終わるEDがあるとは鼻から思ってませんでしたけどね。分かり易い選択肢はシナリオを読むという事を阻害する程度ではありませんでしたし、メインヒロインもそうですがサブキャラもパンチのあるキャラクターばかりで楽しかったです。Hシーンも地味にエロかったし、ねこねこソフトお得意の行為ではなく雰囲気で興奮させるエロには大変お世話になりました。

 という訳で基本的に良作という事で終わっていいんですけど、やはりあの愛衣という妹については書かなければなるまい。素直で素直で素直な妹、そしてお兄ちゃん好き好きビームを出せる妹、このコンセプトはみずいろの雪希さんと同じです。ですが今回はその一つ一つの動作の破壊力が増してましたね。もう何なんですか!ほかのヒロインに嫉妬して「みゃ〜〜〜〜!」とか叫ぶとか、「キスしてくれなくて欲求不満だからこっちにキスするの!」とか、「妹やめれば付き合えるんでしょ!」とか、自分の体でお兄ちゃんの背中を流すとか、基本小さくて貧乳だとか、それにコンプレックスをもって友達と比較するとか、バストアップ体操に励むとか、もう挙げれば切りがないですがあらゆる場面でパワーアップしています。ぶっちゃけどの世界でも愛衣シナリオを一番楽しみにしてましたからね。特に愛衣世界の愛衣シナリオなんで一番最後に残してましたからね。

 そんな超弩級の破壊力をもつ妹のくせに、一番まともで普通のシナリオだったのが愛衣世界の愛衣でしたからね。ずっと兄妹の関係を壊したくないけれでも一歩踏み出したい葛藤に悩む兄。そんな関係を島まで泳ぐという共通目標を持つことで変えていこうというある意味のスポコンのようなシナリオ展開、そしてオチは妹も同じ気持ちでいて晴れて両想いになれるED、一番シナリオが安定したものだと思いました。ズルいですよね。他の世界では完全に萌えキャラで通しているのにメインの世界では多少まともなんですから。このあたりの微妙な差分がさらに愛衣の魅力になっているんだなと思いました。

 ちなみに一番好きなシナリオはつばめ世界の愛衣シナリオでしたね。お兄ちゃんの事が好きで一線を越えてしまったのにその事をつばめに言えない葛藤。そんな生活に疲れてしまい別れようとする兄妹。ですが最後はつばめが一歩踏み出して兄妹の為に身を引くシナリオです。様々な人の想いが重なっておりながらコンパクトにまとまった物語だと思いました。まあ一番のメインはあきらかにつばめ世界のつばめシナリオなんでしょうけどね。力の入れ方が違いましたからね。それでも片岡とものシナリオに耐性があった私にとってはやはり妹の牙城は崩れませんでした。

 という訳で私にとってそらいろは愛衣ゲーでした。もちろん他のキャラクターも魅力的なのですが(特に愛衣世界の花子)、やはりねこねこソフト王道の路線でありながら更なる高みを目指した妹は見事でした。これからも良質な妹を作ってください。いや、むしろ作らないでください。そんな作品でした。


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