M.M SNOW


<完全なまでに美しい演出>

 この「SNOW」と言うゲーム、私がプレイした中で最も「感動」した作品となりました。プレイしたきっかけは、友人がやたらとこのゲームに期待していてなんとなくタイトルを覚えていた事です。その後、Studio Mebiusのホームページに足を運んでみたところ、なにやら面白そうな雰囲気を感じましたので、プレイしてみました。

 まず評価出来る点としては、音楽の素晴らしさです。BGMは冬の世界観に合っているものが多く、良い雰囲気を作っています。そして、一曲一曲が基本的に明るい雰囲気を出していてプレイヤーに良い印象を与えると思います。ボーカル曲ですが、さすが「I've」が関係しているだけあって素晴らしい出来になっています。OPを始めとして、このボーカル曲を聴くためだけにサウンドトラックを購入する価値があると思います。

 他に評価出来る点として、グラフィックの良さです。舞台は冬ということで、雪の書き方が非常に上手いです。背景が綺麗なのは勿論なのですが、シーンごとに雪を降らせる演出はまさに美しいの一言です。そして、効果音も非常によく仕上がっています。雪の中を歩く音、草むらを掻き分ける音、吹雪の音など、とにかく多彩な効果音が良い雰囲気を作っています。そしてシナリオですが、各ヒロインごとによく練られた物になっています。まさに「感動」するためのシナリオと言っても良いかもしれません。

 と、ここまでは淡々と良い部分を書いてきましたが、この「SNOW」というゲーム、本当に素晴らしいところはこういったそれぞれの要素ではありません。最も評価出来るのは、これらの要素を一つにまとめ上げた「演出」の素晴らしさにあります。ネタバレの都合上内容までは詳しくいえませんが、それぞれのキャラクターは独立の者ではなく、シナリオの深い部分で大きく関係しています。その関係というものですが、実は全てのキャラキターが平等にリンクしていて、誰一人として欠くことが出来ないようになっています。普通のゲームの場合、いわゆるメインヒロインと称されるヒロインのシナリオ以外はおまけ的な扱いになってしまうケースがありますが、「SNOW」の場合は本当に一人として欠くことが出来ないのです。この統一性の演出がまず一つ素晴らしいと思います。そして音楽ですが、エンディングを迎えて初めて分かるのですが、ボーカルとBGMのタイトルがシナリオにリンクしているのです。勿論タイトルだけ見てもシナリオなんて分かりませんが、全てを終えてから改めて確認すると、その相関関係に感動するかと思います。ここまで様々な要素をまとめ上げて、一つの完全なる作品に仕上げる「設定の演出」こそが、この「SNOW」というゲームの真の魅力であり、私が感動したところであると思います。

 とにかく、ありとあらゆる要素が一つにまとまっている世界観はそうあるものではありません。この美しい演出を作り上げている「SNOW」、ぜひ死ぬ前にやってもらいたいです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<SNOW=雪を無くする物語>

 私がこの「SNOW」というシナリオで自分が最も感動したことは、やはり「SNOW」というタイトルでありながら、悲しみの雪を無くする物語であるというところです。それでも、一通りプレイしてみて、まだまだ分からない点は多くあります。

 そもそも龍神村が万年雪になった原因は、「若生白桜」と「菊花」の子供である「若生桜花」が、父上と母上に会えない悲しみから来ています。過去に龍神である菊花が人間と交わりを持った事で、それに関わった者全員が天罰を受ける事になりました。そして、その天罰の結果として「悲しみの雪」が残ったわけです。この時点で、私は天から下される罰はまだ終わってなく、特に「菊花」には特別重い罪が課せられ、「若生桜花」には罪は課せられていないと解釈しました。そう考えた理由は、直接的に戒めを破ったのは他でもない「菊花」であり、また現代で唯一幸せなエンディングにたどり着けなかったのが「菊花」の生まれ変わりである「雪月澄乃」のシナリオだけだったからです。これは、この「SNOW」という物語のスタートという意味であえて「雪月澄乃」のシナリオのみ不幸なものにしただけかもしれません。しかし、全て終わって改めで全体を見渡した時、やはり「雪月澄乃」のみ不幸なエンディングであることに納得いきませんでした。

 そして、この「SNOW」というゲームの性質から考えたところ、やはり「桜花」エンディングが「SNOW」における最終的なエンディングとして位置づけてあります。これはエンディングの内容を見れば明らかですが、過去に天罰に関わった者全員が幸せになっています。そして、それ以外のエンディングは確かに何かしらの結論が出ているものの、まだ雪は晴れず、エンディングを迎えたヒロインのみ(雪月澄乃シナリオ以外)が幸せになるという結果になっています。これが、まだ天罰が終わっていないと思った理由です。とはいえこの考えに特別な根拠はありませんし、色々突っ込もうと思えば突っ込まれる感想です。結局のところ、細かい部分までは本当に謎のままとなっています。

 とはいえ、過去の天罰から始まった数百年の呪縛を、「出雲彼方」が解放するというスタンスは非常に美しく、これが全ヒロインに共通しているという点が素晴らしいと思います。そして、やはり「桜花」シナリオが「SNOW」の真のエンディングとして疑いません。よく「Kanon」と「AIR」のパクリだと言ってやたら「SNOW」を毛嫌いする人が多いようですが、そういったしがらみを取っ払って、改めてやり直してみるとまた新しい発見があるかもしれませんよ。

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