M.M 戦場ノベルゲームシリーズ1 蜃気楼戦線


<この作品の醍醐味は、戦場の雰囲気と男の生きざまを感じることです。>

 この「戦場ノベルゲームシリーズ1 蜃気楼戦線」は同人サークルである「moarea88」で制作されたビジュアルノベルです。moarea88さんとは実は即売会などでお話した事はありませんでした。作品をプレイした切っ掛けはCOMITIA112にサークル部活動として参加する「ノベルゲーム部」のメンバーにmoarea88さんがいたことでした。今回ノベルゲーム部の中で私もソムリエ役として参加する事になりまして、参加されるサークルさんの作品をプレイしない訳にはいかないという事で今回のレビューに至っております。

 この作品は、とある戦場で故郷を失った男が自分の目的を果たすために空を飛び続ける物語です。あらすじですが正直殆どありません。是非男の生き様というものを感じてみて下さい。最大の魅力は戦場らしい臨場感です。航空機はCGで作られており本物を観察し色合い等を検討した様子が伺えます。また空の描写がとても綺麗で、どこまでも飛び続けたい衝動にかられます。そしてこの作品は英語フルボイスです。男の持つ苦悩や躍動感といったものを文章だけでなく声でも味わう事が出来ます。特に会話部分とテキスト部分の感情移入の差を聞き分けてみて下さい。彼が何を思い航空機に乗っているのか、たとえ英語が分からくても雰囲気は伝わると思います。

 プレイ時間は私で15分掛かりました。本当にあっという間に終わってしまいました。短すぎるが故に伏線などもなく、男の心情が直球で届いてきます。ここは是非AUTOプレイで全てのボイスを聞いてみては如何でしょうか。それでも30分と掛からず終わると思います。映画を観るように部屋を暗くするのも良いかも知れません。醍醐味は戦場の雰囲気と男の生きざまを感じることです。このシリーズは今後も展開していくみたいですので、是非次回も同じような世界観を感じたいですね。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<成仏したのは彼だけではなく、彼の相棒であるP-40もでした>

 果たして彼は何者だったのでしょうか。恐らくは全てがきっと彼が残した無念の想いなのでしょう。故郷を失い復讐するべき敵を倒すまで、彼はずっと空を飛び続けていたのです。その想いが成就されたとき、それが相棒であるP-40との別れの時だったのかも知れません。

 恐らく戦争では彼のように故郷を失い無念の戦死を遂げた人が何万人もいたのだと思います。彼はフランス軍でしたが、敵であるドイツ軍にも同じように故郷を失い無念の戦死を遂げた人がいたはずです。彼と同じように今この瞬間も敵を倒すために空を飛んでいるかも知れません。いや、恐らく飛んでいるのでしょう。彼らにとって戦争は終わっていないのです。故郷を失った彼らにとって復讐することが全てでした。こんな悲劇、二度と繰り返されて欲しくありませんね。

 P-40が殆ど新品同然で見つかったのは恐らく彼の思念が残っていたからだと思います。加えてこのP-40がこれまで見つからなかったのも彼の思念が覆い隠していたからだと思っております。彼の復讐が達成され成仏したとき、やっとこのP-40も白日のもとにさらされたのだと思います。成仏したのは彼だけではなくP-40もでした。役割を終えたP-40がどうなるかは分かりません。当時の資料として残り続けるのか鉄屑になるのか、いずれにしても持ち主を失ったP-40は二度と空を飛ばない気がします。むしろP-40が空を飛ぶ必要のない世界であって欲しいですね。そんな事を思い今回のレビューとさせて頂きます。ありがとうございました。


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