M.M シュレーディンガーの扉


 この「シュレーディンガーの扉」はいわゆる「寝取られ」と呼ばれるジャンルとなっており、現在ネタバレなしのレビューはありません。ですが、この作品を通してそもそも寝取られに必要な要素とは何か、この作品の魅力は何か、など総合的なレビューを書こうと思っております。したがって、


・そもそも寝取られ要素に興味はないし見たくもない
・どんな些細な点でもネタバレは避けたい


という方は下から避難していただけますようお願いします。


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<寝取られゲームの一番の要素はプレイヤーが感情移入出来たかどうか>

 寝取られゲームとして求められるのは何か、それはエッチシーンのシチュエーションだったり絵だったり様々な要素が挙げられると思いますが、私の中でその答えは「シナリオ」そのものにあると思っています。寝取られゲームとは、主人公がヒロインを他の男に寝取られることで主にプレイヤーの嫉妬心を掻き立てるゲームです。それは例えば、主人公よりも他の男のほうがセックスのテクニックが上手い、他の男の方がアソコが大きい、ヒロインが主人公の前で他の男に侵されよがっているシーンを見せつけられる、等など主にエッチシーンでのやり取りによる要素の方が大きいです。実際多くの寝取られゲームはそういった内容を多分に含んでおり、そういったシチュエーションが秀逸なゲームほど優秀な寝取られゲームとして評価されています。

 ですが、私がそうなのかもしれませんが主人公があくまでプレイヤーとは別離なものとして認識されると、たとえ他の男に侵されているシーンを見せつけられても「そういうシーンだ」と割り切って嫉妬心を掻き立てられるというよりはただの抜きゲーとして見てしまうことになりかねません。寝取られているシーンに興奮するのは、実は嫉妬心ではなくただそのシチュエーションを「他人」として楽しんでいる、案外そのように寝取られゲームを楽しんでいる人は多いのではないでしょうか。だからなのかもしれません。最近の寝取られゲームは「ありきたりだ」という評価を聞くのは。シチュエーションが似ていて絵などで差をつけようとしている以上ありきたり感を脱することは出来ません

 ではどのように嫉妬心を駆り立てればいいのでしょうか。それにはまず第一に「主人公=プレイヤー」という図式をしっかりと植えつけるということ、そしてヒロインに対して感情移入が出来ることだと思います。主人公もヒロインも自分とは全く関係のない存在だったら、興奮するかもしれませんが嫉妬心は生まれません。そして、主人公とヒロインに感情移入させるにはどうすればいいのか、それこそシナリオで勝負だと思っています。「寝取られゲーム」と「泣きゲー」はある意味似ていると思っています。それは、プレイヤーが登場人物に感情移入して心が震える点においてです。まずはプレイヤーの心を引きつけなければ感動しませんし嫉妬もしません。寝取られゲームも大きな枠組みで見ればサウンドノベル、ノベルなので本質的にはシナリオで勝負して欲しいものだと思っていました。

 そんな中、このシュレーディンガーの扉は多くの寝取られゲームファンの心を掴んだと聞きます。発売は2009年、既に多くの寝取られゲームが発売されている中でここまで評価されている寝取られゲームとは何かということで非常に興味を持ちました。話によると、絵やシチュエーションは特出した点はないけれど「シナリオ設定や登場人物に対する感情移入が凄い」という事です。今まで殆ど寝取られゲームというものをしてこなかった私にとってこれこそ私の求めていた寝取られゲームではないかという事で、今回満を持してプレイしてみました。



※ここから完全なネタバレです。



 このゲームは主に二つのパートに分けられます。一つは同じ部活の後輩に寝取られるパート、もう一つは同じ学校の教師に寝取られるパートです。そしてどちらにも共通なのが、学園生活から始まり卒業、結婚、出産、社会人生活と比較的長い時間を表現しているという事です。そういう意味で、ただ寝取られて終わりという単純なものではありません。実際結構早い段階でヒロインは寝取られそれが原因で妊娠してしまうのですが、「子供に罪はない」という意思のもとに辛くても主人公と共に人生を歩むというシナリオになっています。この流れには実に人間的な要素を感じますし、寝取られて感じてしまっても主人公に対する愛情をしっかり持って前に進もうとする姿は非常に好感を持てます。そしてその現実を何とか受け入れて社会人としてヒロインを支えていこうと決意する主人公にも好感を持てます。この段階で、なるほど今までの一般的な寝取られゲームとは確かに違うなと思いましたね。

 ですが、それだけではシナリオとして良くても寝取られゲームとしては弱いです。何故なら、最終的に主人公とヒロインが結ばれれば肝心の嫉妬心が生まれないからです。そして、その部分をしっかりとこのゲームはフォローしてくれてますね。前半で主人公とヒロインに好感を持たせ、後半で一気に落とす、これはかなりダメージが来るのではないでしょうか。社会人になって夫婦と子供で幸せな生活をしている裏で、実は他の男との関係が続いていた。しかも主人公よりもテクニック・大きさが勝る他の男とのセックスはヒロインにとっては最高のものであり、心の中で主人公に謝罪しながらも体を委ねていきます。そして、他の男の要求はどんどんエスカレートしていき、子供も名前やヒロインの生活、さらには食事の味付けや髪形まで他の男好みのものに変わっていきます。それを何も知らない主人公はこれからもヒロインと子供を支えていくという流れです。

 これはプレイヤーにとって嫉妬心を駆り立てられるでしょうね。最大のポイントは、他の男とセックスしていても心の中で主人公とヒロインが何とか繋がっているという事ですね。そういったギリギリのラインを保つことでプレイヤーの心を離さず嫉妬心を保ったままシナリオを進めることが出来ています。実際ヒロインは現在の家庭を壊さないよう振舞いますし、主人公もヒロインと子供のことを愛しています。そして極めつけ、最後の最後でヒロインは主人公に対する申し訳なさという気持ちを捨て、形ばかりの家庭を守りつつ他の男とのセックスを楽しむというエンディングです。もちろん主人公には隠したままです。ギリギリまで持ちこたえていた嫉妬心をポッキリと折ってくれます。主人公にとっては本当に救いのないシナリオでした。

 ただ、ある意味では主人公が真実を知ることのないままのエンディングですので、本当の意味で絶望にならないだけにまだ救いがあるという解釈も出来るかも知れません。そういう意味で、折角学園生活から社会人まで描いているのだから究極の寝取られゲームを目指すならば「寝取られている事実が主人公に発覚して、それから主人公とヒロインがどのように向き合うか」といったシナリオも読んでみたかったですね。ここを表現することが、本当の意味でこの二人が信頼しているかという事を表すことになりますからね。ずっと主人公のことを思っていたヒロイン、それが社会人になる過程で何年も主人公より気持ちいいセックスをしてきて、さてバレたらどうなるか、ここ真価が問われるのではないかと思いました。

 そして一つ残念だったのは、シナリオそのものの期間は長いのに肝心のプレイ時間が非常に短いという事ですね。全てのシナリオを読み終えるまで約3時間、残念ながら私がどっぷり感情移入するにはあまりにも短すぎました。そして、シナリオの半分以上は他の男とのエッチシーンでしたので、確かに主人公とヒロインの繋がりは意識できたのですがそれ程ヒロインに対して許してあげたいという気持ちになれなかったですね。結局はセックスの気持ちよさに負けたのか、と。寂しいようですがこんな感想が一番しっくり来るのかもしれません。

 とはいえ寝取られゲームとして重要な要素である嫉妬心をうまく表現できた作品だと思います。同人という事で安価であり、ある意味値段相応だったかも知れません。まあ、このゲームが本当に秀逸な寝取られゲームならばもう私は自分から進んで寝取られゲームはやらないでしょうね。こう言ったら角が立つかと思いますが「寝取られゲームの底が知れた」という事です。数々の寝取られゲームプレイヤーの心を折っていったシュレーディンガーの扉、ある意味では非常に良い経験となりました。これから何か寝取られゲームを始めようかと思っている方がいましたら、結構おススメです。


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