M.M Sakura〜雪月華〜


<見事なまでのキャスティング>

 「水夏〜suika〜」「D.C.〜ダ・カーポ〜」と非常に良い作品を出してきたcircusが次に世に送り出したのが、この「Sakura〜雪月華〜」です。PS2での発売という事で全年齢対象の作品でしたが、やはりcircus監修となればかなりの物が期待できると思いましたのでプレイしてみました。結果から言いますと、なかなかの良作でした。

 まず特出するべき点は、声優へのこだわりです。この「Sakura〜雪月華〜」、全年齢対象のゲームということで俗に言う「アイドル声優」の方々を非常に多く起用しています。「堀江由衣」「田村ゆかり」「野川さくら」「氷上恭子」「水樹奈々」「豊嶋真千子」と聞いて、あまりの豪華さに舌を巻くことと思います。さらに、各ヒロイン毎にグッドエンディングをむかえると、各ヒロイン毎に用意されたエンディング曲が用意されています。これだけでも凄いことなのですが、なんとそのボーカルはそのエンディングをむかえたヒロインの声優さんが歌っているのです。これはファンにとってはこの上ない演出だと思います。そして、この「Sakura〜雪月華〜」は男性人全員にも声がありますが、こちらも負けず劣らずのキャスティングです。「石田彰」「子安武人」「置鮎龍太郎」と聞けば、その豪華さに圧巻することと思います。

 他に注目するべき点は、BGMへのこだわりです。この「Sakura〜雪月華〜」というゲームは、通常の学園を舞台にした部分と、劇を演じている部分の二種類があるのですが、それぞれで使用されているBGMが違っています。これは、場面ごとに適したBGMを選択しているという事を意図しており、その通り場面ごとに透き通るような綺麗なBGMが流れてきました。一つ残念な事としては、各BGMに曲名が無いことです。グッドエンディングを一人でも見るとサウンドモードが出現するのですが、そこでの曲名は「楽曲1」「楽曲2」といった感じで曲名が無いのです。雰囲気を考えて、これはどこか物寂しい印象がありました。

 あと注目するべき点は、演出へのこだわりです。前にも言いましたが、この「Sakura〜雪月華〜」というゲームは、通常の学園を舞台にした部分と、劇を演じている部分の二種類があります。ここでなんと、通常パートから劇パートに移行する時にムービーが流れるようになっています。まさに、物語の始まりを印情つける様な演出です。そして、通常パートと劇パートでテキストの表記の仕方が違います。通常パートはウィンドウ形式で、劇パートは全画面形式です。これも、日常と劇との違いを印象付ける演出になっていると思います。

 そしてシナリオについてですが、これはキャラクターによって非常に偏りのあるものでした。メインヒロインとされているキャラクターは、エンディングを向かえるまでに大よそ7時間程掛かったのですが、そうでないヒロインは2〜3時間で終わりました。この差によって、シナリオの内容の密度にも大きな差が出てしまい、メインヒロインではないヒロインがまるで「飾り」のような扱いになっているような印象になってしまいました。それとメインヒロインのシナリオの内容についてですが、なかなか深い内容だったのですが起承転結の「結」の部分を急ぎすぎてしまった感じでした。その為に、折角のシナリオも後味の悪いものになってしまったと感じています。

 そういった意味で、この作品は「もったいない」と思いました。前にも言いましたが、声優や演出などに対する作りこみは本当に一流のものでしたし、日常パートと劇パートのシナリオもとても面白いものでした。これでシナリオが満足のいくものであったらまさに完璧だったと思いました。とはいえ、普通に楽しめる内容ですので、時間とお金に余裕があったらプレイしても良いと思いますよ。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<詰めの甘さが響く>

 全シナリオをプレイしてみて、とりあえず思ったことは「草薙小雪と出雲明日香シナリオ以外は要らないのでは?」ということでした。草薙小雪は「安倍晴明」が愛した女性「雪」の前世であり、出雲明日香は1000年前から存在している「安倍晴明」が使役した式神「玉藻」であるので、平安時代からの輪廻の呪縛に絡んでいるという意味でこの二人が重要な位置づけになっています。そのため、クライマックスにいくらか不満はあるものの、この壮大なシナリオも内容は一貫していて良い出来であったと思います。しかし、その他のヒロインは弱冠過去に関係しているとはいえ、今回の呪縛にはほとんど関係ありません。しかし、彼女たちのシナリオも「草薙の剣」が登場し、「葛葉」を倒すことでエンディングをむかえます。私が思うに、「葛葉」の思いや「草薙の剣」の宿命に関係するシナリオは「草薙小雪」と「出雲明日香」のみにするべきであると思いました。それほどまでに、1000年という時間は長い物だと思います。しかし、その他のヒロインはただの恋愛に関する事情しか持っておらず、これだけでは「葛葉」や「草薙の剣」という設定につり合わないと思いました。

 それと、「草薙小雪シナリオ」のクライマックスについてですが、それぞれの時代で続いた運命の輪廻をどう断ち切ってエンディングをむかえるのかが楽しみでした。しかし、結局「葛葉」は「平将門」につれられてその憎悪を断ち切るというものでした。これでは今まで続いてきた運命の輪廻は全て「平将門」に委ねられていたという印象になり、「草薙誠」と「草薙小雪」は自分の力では運命は変えられなかったということになります。シナリオのテーマ的にも、これはちょっと残念な終わり方だったという印象になってしまいました。

 そんな感じで、この「Sakura〜雪月華〜」は1000年の呪縛などといった設定は良かったのですが、どうも最後の詰めが甘い気がしました。他のヒロインのシナリオに対しても、これでいいのか?と疑問を投げかけたくなる感じでした。まあ、作りこみは非常にすばらしいものがありましたので、気が向いたらもう一回プレイしたいですね。


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