M.M PROGRESS 第一章


<登場人物達の分かりやすい性格に愛着を持ち、ヌルヌル動く演出に驚かされました。>

 この「PROGRESS 第一章」は同人サークルである「あいうえおカンパニー」で制作されたビジュアルノベルです。あいうえおカンパニーさんの作品は過去に「しずくのおと - sound of drop -」をプレイさせて頂き、ホラーを作り上げる演出の丁寧さと細かさが大変印象に残っておりました。今回プレイした「PROGRESS 第一章」は「しずくのおと - sound of drop -」の過去に制作されたという事ですが、ヌルヌル動く演出はそのままで技術力の高さとセンスの良さを感じました。

 主人公である紺野珠樹はこの秋から教育実習生として中高一貫の海葉学園に赴くことになりました。ですが紺野は唯の教育実習生ではなく、学園に潜む「超能力者」の存在とその背後にある「次世代エネルギー」の秘密を解き明かすことでした。重い任務を背負いながらも教育実習生として教壇に立ち、生徒に物を教えていく事に喜びを覚えていく紺野。ですがそんな平和な学園生活はとある生徒がタバコを吸っている現場を目撃したところから徐々に崩れていきまる。時を同じくして生徒である朝ヶ丘百合から自分を守ってほしいという依頼、果たして学園を牛耳っているレッド・アイズとはどのような組織なのでしょうか。

 この作品の特徴はやはりヌルヌル動く演出にあります。公式HPをご覧になればわかりますが、この作品には戦闘描写が多数登場します。しかもそれは人と人のちょっとした喧嘩というレベルではなく、超能力を使用した人外の力のぶつかり合いです。本作ではそんな超常的な雰囲気をヌルヌル動く人物と背景で丁寧に表現しており、テキストと合わせて戦闘描写を描いております。またこの演出は日常の描写でも使用されており、例えば学園をちょっと歩いたり職員室で生徒からの質問を受けたりする何気ない場面でもヌルヌル動きます。単純に見ていて面白いです。これこそビジュアルノベルだからこそなし得る演出だなと思いました。

 プレイ時間は私で1時間45分掛かりました。この作品はまだ第一章ということで、この学園に潜む謎について殆ど明かされておりません。それでも主人公を取り巻く環境は大きく変化し、この後戦いが激化していくことは間違いありません。果たして超能力者は何人いるのか、彼らの目的はなんなのか、この学園に潜む謎はなんなのか、是非今後の展開に注目です。またこの作品の登場人物は一癖も二癖もありますが、性格は割と素直で非常に分かり易いです。是非登場人物に愛着を持って頂き、今後の転換を楽しみにして頂きたいですね。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<果たして誰が嘘をついていて誰が本当の事を言っているのか、細かなセリフ回しに注目ですね。>

 まずは紺野がカッコ良かったです。教育実習生としても真面目ですし生徒に毅然とした態度を取るのも好感が持てました。何よりも強いですからね。後半穂積の煙の能力に押されはしましたが、最後まで冷静に状況を判断し勝負に勝つことができました。表も裏も全て紺野を中心に回る事を予感させました。

 上でも書きましたがとにかくヌルヌル動く演出に驚きました。そしてその演出がとても細かいことにも感心しました。途中生徒会長が遠くから顔を出す様子やその後渡り廊下を歩くときの矢印、そして百合が晶平にカラーコーンを被せるところなんて思わず笑ってしまいましたからね。かなり時間をかけて推敲されたんだなと感じました。そしてメインの穂積との戦闘でも、彼女の十八番である煙の演出がやはり細かく紺野にとって絶望的な状況が伝わってきました。テキストだけでは表現しきれない戦闘描写という事で、ビジュアルの方も目を離さず見ながら読み進める事が出来ました。

 そして登場人物ですが、果たして誰が嘘をついていて誰が本当の事を言っているのでしょうか。恐らく穂積や百合は紺野の味方であると思っております。ですが穂積が作ってきたレッド・アイズが崩壊しても、そのメンバーがそのまま大人しくなる事はありませんでした。最後にやってきた晶平、あの最後の爆発は彼が行ったのでしょうか。そうであったとすれば彼もまた超能力者という事になります。もしかしたら立ち絵のある人物は全て何らかの超能力を持っているのかも知れませんね。誰のどんな力が働いているのか、細かいセリフ一つ一つに注目してテキストを読み進めていこうと思います。

 最後に地味に気になっているのが、紺野の最後のセリフである「てめーを殺す!」です。紺野は確かに超能力者を探すために潜入しておりますが、学園では生徒と先生という立場を重んじ秩序のある行動に努めてました。ですがそんな紺野の口から仮にも生徒である晶平に対して「殺す!」なんて言うとは思ってませんでした。紺野にも何らかの変化が生じているのでしょうか。彼の魅力は強さもそうですがそれ以上にその真面目で正義感のあるところだと思っております。是非第二章でも本当の意味でカッコ良い紺野が見れることを期待してレビューの終了としたいと思います。ありがとうございました。


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