M.M Narcissu


<想像性へのこだわり>

 この「Narcissu」というゲームは、「ねこねこソフト」などでシナリオライターとして活躍している「片岡とも」さんの個人サイトである「ステージ☆なな」の作品です。ねこねこソフトの作品はどれも個人的に好きであり、さらにこの「Narcissu」という作品は無料ダウンロードでき、時間も全部で一時間半で終わるとの事だったので、気晴らし程度にやってみました。結果から言いますと、短さの中に伝えたい内容を上手く凝縮した物だったと思います。

 このゲームの大きな特徴として、プレイヤーの想像性というものを十分に意識しているということです。このゲームには「立ち絵」がありません。というより、背景画というものも殆どありません。つまり、「絵」からは基本的に最低限設定が分かる程度の情報しか手にはいらないという事になります。そして、ヒロインに「ボイス」はあるのですが、これは有る無しを選択できるようになっています。しかし、製作者は決して「ボイス有り」を推奨しているわけでなく、あくまでプレイヤーの想像力の範疇の程度によって選ぶよう説明しています。このように、ゲーム側からは最低限設定の分かる情報のみを提示し、基本的にプレイヤーの想像に任せた作りになっています。

 そしてシナリオですが、前にも言いましたがゲームからは最低限の設定の情報しか得られませんので、シナリオを追いながらプレイヤーは場面を創造しながらプレイする事が出来ます。しかし、このシナリオの最大の特徴として、想像に任せる部分はとことん想像性に委ねて、他の部分は徹底的に具体的に描いている事です。例えば、主人公達が現在居る地名に始まり、日付、主人公が飲む飲み物、車の車種まで、シナリオ上表さなければいけない物に関しては細かく描いています。

 このゲームの素晴らしいと思うところはこの点だと思います。シナリオで表現しなければいけない事は徹底的に表現し、その必要のないところは徹底的に想像に任せる、このスタンスは有る意味ではプレイヤーにとって最もストレスを持つ事無くシナリオを読み進める事に繋がると思います。ちなみに、このゲームのテーマは「死」です。公式ホームページにもありますように主人公とヒロインは両方とも死にます。その死の過程を描いたシナリオになっています。この「死」をテーマにしたシナリオをストレス無く読み進められれば、このゲームが言わんとしている事、そしてその先に待つ感動を十分に味わう事が出来ると思います。

 とにかくこれ程までにストイックで、プレイヤーの想像性という物を生かしたゲームは私は知りません。プレイ時間も短いですので、時間に余裕があったら是非やってみては如何でしょうか。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<輝くという事>

 このゲームを終えて思ったことは、人は死ぬまえに一度でも輝きたいのではないかということです。

 ヒロインであるセツミはずっとホスピスの様な環境で過ごしてきて、外界の世界に興味など持たずに生活してきました。しかし、それはセツミの表向きの気持ちであって、本当はセツミも誰かに注目されたいとか、人と触れ合いたいという気持ちを持っていました。それは、セツミがやたらと車や地名に詳しいという点からも想像できると思います。そして、セツミは主人公との出会いによってそれを実現できました。

 死というものは誰にでも平等に訪れる物であり、避けられない事です。重要なのは、その限られた生の中で輝ける時があったかどうかにあります。おそらくこのゲームで言いたかった事はこんな感じのことだと思います。だから最後に、輝ける時を過ごせたセツミは、何も後悔する事も無く自ら死を選んだのだと思います。そしてそれは、同じような境遇であった主人公にも理解できる物でした。死期が近ければ当然出来る事も限られてきます。そんな中で、セツミは十二分に輝いていたという事を主人公はもちろん理解できたのです。セツミは、この主人公に出会えたことで本当に幸せになれたのだと思います。

 正直プレイヤー側から見れば、悲しく、理解に悩む作品かもしれません。それでも、この「輝く」ということをこの短いシナリオで表現しきった片岡ともさんの姿勢は素晴らしいと思います。シナリオの良さは、長さや丁寧さではなく、テーマを表現しきる事だという事を認識させられた作品でした。


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