M.M マッドティーパーティーにようこそ!


<「行間」の活用で場面の重要度を区別する演出>

 この「マッドティーパーティーにようこそ!」という作品は同人サークルである「たまごちゃんねる」で制作されたサウンドノベルです。作品自体発売されたのは確かサンシャインクリエンション55(以下SC55)の時でして、私がこの作品を手に入れたのは奇しくも次のサンクリであるSC56の時でした。短時間で終わる謎解きものという事で面白そうだなと思ったのが買った動機でしたね。そもそもSCにはなかなか同人ソフトを出しているサークルが少なかったので、財布の紐がダダモレになっている私にとって買う事はもはや決定事項だったのかも知れません。感想ですが、演出に拘ってプレイヤーを飽きさせない工夫がされている作品だと思いました。

 この作品、プレイすればすぐわかるのですが気を抜くポイントが殆どありません。実際はシナリオの流れ的に気を抜いて全然かまわない部分はもちろんあるのですが、それを簡単にさせてくれなかったのはひとえに演出の成果だと思っています。ちなみに気を抜くポイントが無かったのはマイナスポイントではなくむしろプラスポイントです。サウンドノベルにとって読むという事を邪魔する要素は致命的です。その読むという事に対して気を抜けさせない演出はシナリオをしっかりと理解する上で大きな意味を持ちます。良く考えられた演出だと思いました。

 具体的な内容ですが、この作品は背景に文字を表示させるいわゆる「To Heart形」のテキスト表示です。この形式ですと画面いっぱいに文字が表示されて直ぐに文字がスクロールされないメリットを持つ反面文字だらけで読む気が失せてしまうデメリットも持っています。ですが、この作品ですがシナリオの場面の雰囲気を「行間」を使って表現しているのです。淡々とした会話ならツラツラと文字が表示されるだけですが、山場になりますと行間を明一杯とって2行とか3行とかしか文章を表示しないんです。例えるなら小説で重要なセリフがあった時にそれを1ページまるまる使って中央にポツンと表現するような、とにかく大事な場面とそれ程でもない場面を行間を使って区別している点が絶妙でした。他にはテキストだけでなく背景や人物描写がコロコロと変化するんですね。途中カットインのような演出もたくさん入りますし、それだけで十分飽きさせない工夫です。とにかく行間を使った場面の重要度を区別と背景とカットインを巧みに操った演出で飽きさせない工夫を行っていました。

 後はBGMも雰囲気に合ったものですね。それぞれのBGMで使われている音数はさほど多く無なかったのですが、主題を全面に出したストレートで分かり易いサウンドばかりでしたので聞いていて気分が良かったです。また場面場面で全く曲調が変わり、緊張する部分とマッタリする部分とでのメリハリが凄く効いていました。荒削りながらも全体として場面にあったBGMだったと思います。

 そして肝心のシナリオですが、これは実に個性的なものでしたね。あらすじから「主人公が探偵で何かしらの事件を解決するんだろうな〜」と察するでしょうが、そんな単純なものではありませんでした。ネタバレになりますので内容は伏せますが、確かに推理はするのですがシナリオ展開が完全にプレイヤーの斜め上に向かっているんですね。前半はいわゆるこのシナリオの紹介と言いますか概要について話す場面を占めているんですが、後半は推理と言うよりも心理合戦のような感じでしたね。いったい主人公は誰と戦っているのか、そもそも登場人物たちも何を問題にしているのか、そういう根本的な部分が分からなくなってしまうような内容でした。そしてオチがまた特殊でしたからね。正直これは賛否がハッキリ分かれるでしょうね。唯々驚く人もいれば訳が分からないうちに終わったと思う人、面白いと思う人もいれば悪態をつく人もいるかも知れませんね。とりあえずシナリオは間違いなく人を選びますね。

 という訳で短いながらも実に個性的な作品でした。シナリオの是非はともかく行間を上手く活用した演出は新鮮で実に効果的だなと認識しました。恐らく今後も新しい作品を出してくれると思いますので、この演出はそのままに作品を作ってほしいですね。実際のプレイ時間よりも短く感じると思いますし、そのプレイ時間も短めですので忙しい方にもおススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<登場人物とシナリオの投げやり感が勿体ない>

 結局のところあのエンディングは何だったんでしょうかね。主人公であるエンゼルが狂っているのか、それとも全て紅恩の策略で手のひらで踊らされていたのか、今後カトレア事件は起こってそれにエンゼルは噛む事が出来るのか、あらゆる部分が丸投げされていましたので正直エンディングを見た時は「え?これで終わり?」と思いましたね。完全に次回作を出す気満々ですね。

 とりあえずクリスタルパレス事件の謎解きの部分については面白かったです。完全に思える密室殺人、そして犯人と思われる人物の忽然の消失、もはや魔法のように思える完全犯罪に状況証拠だけで結論を導いたんですからね。太胤翁の円卓というヒントから一気に結論に持って行ったあの流れはちょっと感心してしまいました。エンゼルとシズカ、そして紅恩のキャラクターも個性あふれてましたしその当たりも楽しみながら読む事が出来ました。

 ですがやっぱりこの中途半端感は拭えませんね。もの凄い消化不良です。エンゼルはふざけている風貌でありながら実際は探偵としてちゃんと考えているんだな〜と思ったらあのエンディングですからね。そして紅恩もいったいどういう事なんでしょうかね。紅恩がカトレアジョーカーなんでしょうか?それともあれは紅恩ではない別人なんでしょうか?そして話にだけ登場したクラスメイトやSSSの存在ももっと見たかったですね。ただの飾りならいいんですけど、どうもそうでは無い雰囲気がありましたからね。そんな事を考えていると何が真実で何が偽物なのか分からなくなってしまいます。もう訳が分かりませんね。

 とにかく登場人物の投げやり感が勿体ないと思うんですよ。基本的に表に出ていたのはエンゼル、シズカ、紅恩、小霧の4人で、それ以外にももっと重要なキャラクターがたくさんいたはずなんです。普通にエンディング後にエンゼルとカトレア専属捜査班の連中とのバトルとか見れると思ってましたからね。他にもSSSどうしの戦いとか、クラスメイトとの語らいとか、シズカの本領発揮とか、これは投げやりなのか次回作への布石なのか、出来れば後者であってほしいと願いますね。

 それでもネタバレ無しでも書きましたがとりあえず読ませようという演出は実によかったと思います。とにかく行間の使い方が新鮮でしたし、途中に入る英文のカットインや太胤翁の円卓のデザインも良かったです。そして何よりも良かったのは花人間の絵がメチャメチャ怖かった事ですかね。あれは人によってはトラウマになるレベルの怖さだと思うのですよ。

 いずれにしても個性的なキャラクターが織りなすシナリオはプレイヤーを惹きつけるのには十分だったと思います。ですが後味が良くないですね。この辺りのモヤモヤ感は是非次回作で払拭してほしいところです。その辺りを期待して、とりあえず感想はこの辺りで終わろうと思います。


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