M.M LOVEPOTION SIXTNYNINE


<終始ハイテンションな雰囲気でプレイヤーを飽きさせない演出が光りました>

 この「LOVEPOTION SIXTNYNINE」という作品は同人サークルである「Steroider」で制作されたビジュアルノベルです。Steroiderさんの作品をプレイするのは今作が初めてでして、COMIC1☆8で同人ゲームのエリアを回っている時に手に取りました。パッケージに描かれたフワフワしてて柔らかそうな女の子の絵柄だけで正直プレイしたいと思いました。加えて恋が叶う魔法のアイスという設定がより女の子を可愛らしく見せるようで、今回のレビューに至っております。感想ですが、終始ハイテンションな雰囲気でプレイヤーを飽きさせない演出が光る作品でした。

 主人公である「葛城蓮」はどこにでもいる普通の男子学生です。幼なじみである「一条心愛(ここあ)」や双子の妹である「葛城真冬」と何でもない学園生活を送っていたのですが、とある日の帰り道に魔法のアイス屋を名乗るイギリス人の「リオン=マクスウェル」から1つのアイスを手渡されます。それが作品のタイトルにもなっている「ラブポーション・シクスティナイン」というアイスでして、恋が叶う魔法が掛けられております。果たしてこのアイスが蓮・心愛・真冬の関係をどのように変えていくのでしょうか。そして恋とは果たしてなんなのでしょうか。そんな事を考えながらプレイして頂ければと思います。

 最大の魅力はやはりヒロイン達の可愛さですね。見た目通りのフワフワした性格でそれだけでたいへん和むことが出来るのですが、会話はかなりテンポが速くドタバタなラブコメを思わせます。言ってしまえば終始ハイテンションな雰囲気で、プレイヤーに飽きる隙を与えてくれません。ちょっとパロネタが多く感じましたがそれだけに安定したギャグが飛び交わされ、その勢いでシナリオを読み進めることが出来ます。勿論唯のドタバタラブコメで終わることはなく、ラブポーション・シクスティナインの秘密や恋をする事について真剣に書かれております。是非自分自身の学生生活を思い出しながらプレイして頂ければ良いのかなと思っております。

 そしてこの作品は演出にも大変なこだわりを見せております。ところどころにモーションが入りハイテンションな雰囲気を後押ししてくれます。そしてヒロインの表情差分も豊富であり、特にキラキラした立ち絵の描写はそれだけでヒロインが楽しげにしている雰囲気が伝わるようです。そしてBGMですがかなり多くのボーカル曲が使用されております。中々BGMにオリジナルボーカル曲を取り入れている作品はないだけに力の入れ様を感じました。場面場面での雰囲気やテンションに合わせたボーカル曲が流れ、その度にクリックの手を止めて聴いてました。是非ハイテンションな流れの裏で盛り立ててくれている曲に耳を傾けてみて下さい。

 プレイ時間は私で4時間30分かかりました。一気にプレイしてしまいましたので、所々区切ってプレイすれば大よそ5時間は掛かったのではないかと思われます。あとこの作品、Hシーンがあるのですがどれも温かさを感じる内容になってました。完全純愛に相応しいシチュエーションばかりで心をホッコリさせてくれます。そちらも楽しみにして頂ければと思います。後はプレイ開始時に是非音量調整をして欲しいですね。上でも書きましたがボーカル曲が流れます。加えてボイス有りですのでこのバランスを初めに取ることがプレイするテンションに関わってくると思います。是非最高の環境でラブポーション・シクスティナインの秘密を溶き明かして欲しいと思います。アイスだけに。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<魔法のアイスは『導いてくれる』だけ。恋を叶えるのは……君の、愛っす!>

 ネタバレ無しでも書きましたが終始ハイテンションな雰囲気で楽しませて頂きました。と言うよりもシナリオが素直な登場人物達の心理描写通りに進行して、正直驚きました。まさか3人恋人というEDになるとは思いませんでした。主人公とヒロインの愛のあるHに加えて心愛と真冬の百合Hも堪能することが出来て感無量でした。

 蓮を含めこの作品に登場する人たちは本当に人を思いやる美しい気持ちを持ってますね。心愛も真冬も、それぞれ主人公が好きなのですが同時にお互いも大切にしたいと思っておりました。そしてそれは相手を専有することではなく相手に幸せになって欲しいという事、この気持ちが強すぎるがゆえに時には自分を犠牲にしてまで相手の為に尽くそうとしました。真冬が蓮と心愛から離れようとしました。それは本人にとって決して後ろ向きな姿勢ではありませんでした。全ては自分の愛する人の幸せの為、2人から距離を置くという選択肢が自然と出ただけでした。

 ですがこの3人に足りなかった事は自分の我を出すという事でした。3人が3人とも愛しておりました。ですが普通に考えて蓮と結ばれるのは心愛か真冬かどちらか1人です。2人同時に結ばれるなんて、倫理的にも社会的にも有り得ないんです。加えて女の子同士の恋愛もまだまだ理解が及んでおりません。そんな社会的常識を3人は持っていた事もあり自分の歪んだ我を出すことを恐れていました。これは仕方がないことだと思います。自分の我を出すことで3人の関係が壊れてしまうのなら、心に留めてひっそりといなくなってしまえばいい。こう考えるのが当たり前の人間だと思います。

 そんな3人が心の中を曝け出し本当の自分を表現する為に「ラブポーション・シクスティナイン」が背中を押してくれたのだと思います。ラブポーション・シクスティナインの効果は好きな相手との恋を進めることです。それは後ろ向きな自分にサヨナラして一歩前に進むということです。作中でも霧葉さんが「素直になりきれずに、相手をきずつけてしまうなんて、かっこ悪いじゃないですか」と言ってました。あのまま自分の気持ちを曝け出さなければ、相手の気持ちを誤解し傷ついたままになっていました。お互いがお互いを好きで思いやっている3人だったからこそ、素直になった後は何の障害もなく恋人として過ごす事が出来ました。

 後は自分がどれだけ相手を愛しているかという事だけでした。魔法のアイスはあくまで恋する気持ちを導いてくれるだけで、最終的には自分の本心がどうかという事でした。その点については初めからクリアされてました。この3人であれば、社会的に何を言われてもお互いを愛し思いやる素敵な生活が待っていると思います。切っ掛けはラブポーション・シクスティナイン、恋が実ったのはお互いを思いやる気持ちがあってこそでした。本当素敵な恋バナを読ませて頂きました。ラブポーション・シクスティナインは魔法のアイスですが、そもそも恋も魔法みたいなものですね。そんな不思議なものに正面から向き合う姿に心が温かくなる事が出来ました。ありがとうございました。


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