M.M 狐灯夜伽話


<とにかくヒロインであるマリエの魅力を十二分に味わって頂きたいですね>

 この「狐灯夜伽話(読み方はことうよとぎばなし)」という作品は同人サークルである「Chivalry(読み方はシベルリ)」で制作されたサウンドノベルです。C85で同人ゲームサークルを回っている時に偶然目に留まったことが切っ掛けでして、獣ヒロインでありながら純愛を描いたシナリオということでどういった内容なのか気になりプレイしてみました。感想ですが、ヒロインの魅力満載でありながらプレイヤーの気持ちを掴んでくるシナリオ展開に心が温かくなりました。

 この作品の最大の魅力は間違いなくヒロインであるマリエですね。OHPをご覧になればわかりますが、狐っ子であるマリエは始めは耳と尻尾があるだけでそれ以外は人間の外見をしております。ですが時間が経過していくに連れて獣度合いが増していき、より狐らしく変化していきます。時間が経過していくに連れて狐度が上がっていく理由はネタバレになりますので言えませんが、少しずつ狐度が増していく描写がとても丁寧でマリエの些細な変化をプレイヤーはじっくりと堪能することができます。またエッチが好きという設定の通り選択肢次第で数種類のHシーンが用意されておりますが、狐度の進行具合を考慮したCGの書き分けはこの作品の醍醐味の1つになっております。是非プレイヤーには全ての選択肢を選んでいただき様々な角度からマリエの魅力を味わって頂きたいですね。

 そしてマリエの魅力は獣ヒロインという部分だけではありません。性格は非常に大らかでして精神的に磨り減っている主人公の心を癒してくれる優しさを持っております。それでいて時には抜けているような部分もあり、放っておくと危なっかしい部分も持っております。どこまでもヒロインに甘えたいようなシナリオを読みたい人や1人のヒロインを独占したいという人にとってはストライクな性格です。包容力のあるマリエの優しさに触れながら、日常の中に現れた「狐灯亭」という名の非日常の空間を楽しんで頂きたいですね。

 ちなみにプレイ時間としましては私で1時間20分で読み終わりました。気がつけば終わってしまっていたという印象でした。それだけこのヒロインであるマリエの魅力と「狐灯亭」という非日常空間に取り付かれてしまったからなのかも知れません。そして忘れてはいけないのはこの作品のテーマは純愛です。ただヒロインとイチャラブするだけのシナリオではありません。短めのシナリオの中で語られるテーマも是非心の中に留めて欲しいと思います。そんな感じで印象に残る作品でした。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<2人が一緒にいたいと思ったその時から、今の生活や種族の壁なんて関係ありませんでした>

 胸がじんわりと温かくなるようなシナリオでした。これこそ純愛と呼べるシナリオでした。最後の最後までヒロインであるマリエの魅力と優しさが光り、2人の間にある絶対的な種族の壁を取り払うことができたEDは素直に良かったと思えました。

 振り返ってみればマリエは本当に主人公の幸せのみを考えて生きていました。過去に自分のことを助けてくれた主人公、その主人公に忘れて欲しくないと渡したペンダントを頼りにずっと恩を返せる機会を待ってました。マリエにとってみれば主人公に対してどんな形であれ恩を返せれば良かったのかも知れません。例えそれが一回のセックスだったとしてもそれでマリエは幸せでした。

 ですがそんな気持ちとは裏腹に主人公と離れたくない気持ちも持っておりました。そしてその気持ち許されてはいけない物でした。何故なら主人公とマリエは人間と狐という絶対的な種族の違いがあったからです。ずっと一緒にいることは必ずどちらかの生活を失うことになり、それは決してお互いにとっていつか不幸になる時が来ると思っておりました。この気持ちにマリエもそうですが主人公も悩み苦しむことになります。大切な人に恩を返す為にここまで準備してきたのにその人と離れることがここまで苦しいのですから、こんな残酷なことはありませんね。

 だからこそマリエの最初に望んだ形のとおりセックスによって主人公の活力を取り戻すEDでも決して不幸ではないのかも知れません。寂しくはありますがお互い今の生活を失わず目的が達成されておりますし、何よりもこれはお互いは始めに望んだ事でもありました。変に情を持つ前にお互い目的を達成して別れる、この結末で苦しむのは第三者であるプレイヤーだけですね。

 ですが始めにも書きましたがこの作品のテーマは純愛です。そして夢は相手の気持ち1つで変化していきます。2人が離れたくないという想いを持てば、もうお互いの生活とか種族の差とかは関係なくなりますね。最後の選択肢でマリエが人間社会にやってくるか主人公が狐社会に溶け込むかを選ぶことになりましたが、2人にしてみればどちらでも良かったのだと思います。だって、愛し合う2人がずっと一緒にいることが出来るのですから。やっぱりこの2人が一緒にいるEDが一番のハッピーエンドだと思いました

 始めはケモナー向けのちょっと奇をてらったシナリオのゲームなのかなと思いました。ですがその中身は純愛というテーマを表現した真っ直ぐなシナリオでした。短編という事もあり全体の流れもスッキリとしていてどんどん文章を読み進めることができました。もっともっとこの2人の生活といいますかその後の内容について知りたいと強く思いました。是非後日談の作成を強く望みますね。ありがとうございました。


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