M.M 金魚鉢夢想


<エロエロでもシリアスでもとりあえず自由に想像して是非ヒロインとの距離を縮めて下さい>

 この「金魚鉢夢想」という作品は同人サークル「Chivalry」で制作されたビジュアルノベルです。Chivalryさんと初めて出会ったのはC85で島サークルを回っている時でして、この時に購入した「狐灯夜伽話」が獣ヒロインでありながら純愛を描いたシナリオという事で印象に残ってました。その後もTwitterのツイートで常に存在感を感じており、その後に行われたどげざ2013でもお会いする事ができ他の作品もプレイしたいと思い今回のレビューに至っております。感想ですが、パッケージに描かれた2人のヒロインとのエロエロな展開が何よりも魅力ですがシナリオの中で示されたテーマもまた味わい深い物でした。

 公式HPでも紹介しておりますが、主人公には小さい頃に一緒に遊んだ女の子がいました。その子とはとある切っ掛けで離ればなれになってしまい何年も接点を持たない時間が流れてましたが、突如その女の子から「父が入院してしまい、男手がないと不安だ。知らない人間に頼むのは不安なので、ぜひアルバイトがてら、来てほしい」と手紙が届きます。嬉しい半面どうして自分なのかと戸惑う気持ちがありながらも主人公はその女の子の住む大豪邸へと向かいます。そこで出会ったのは麗しく成長したかつての女の子である緋奈、そしてかつての面影そのままの姿で登場じたヒナの2人。果たして2人と主人公の関係はどうなっているのか、そんな不思議な出会いからこの物語は幕を開けます。

 基本的に明るい雰囲気の作品でした。ヒロイン2人はそれぞれ強い個性を持ってますが基本的によく喋る性格で、直接的に主人公にアプローチしてきます。明るいというよりもエロコメのような感じでしょうか、片方は巨乳のお姉さまの様な風貌でもう片方は完全にロリですからね。隠語もナチュラルに飛び出すのでプレイヤーは落ち着かないでしょうね。ですがその中でも色々と気になる設定が登場し物語全体を包み込む謎が気になってくると思います。その謎がとき放たれたとき、この作品は唯のエロコメからシリアスに変身します。是非プレイヤーの皆さんにはそうした登場人物達の気持ちの変化点に注意して読み進めて頂きたいですね。

 とか書きましたがとりあえずは何も考えずにただ直向きに2人のヒロインを追いかければいいと思います。折角これだけ魅力的なヒロインです。主人公にも積極的にアプローチしてきます。プレイヤーも負けずにこの2人のヒロインとどんなイチャイチャが出来るか想像すればいいと思います。そしてヒロインを本当の意味で理解して好きになってこそ、シリアス展開が活きるのだと思います。緋奈とヒナという同じ名前を持つ2人のヒロインですのでもちろん唯の甘々な展開で終わるはずがありませんが、エロエロでもシリアスでもとにかく自由に想像して是非ヒロインとの距離を縮めてください。それがこの作品を楽しむ全てだと思っております。

 プレイ時間ですが私で2時間40分かかりました。ですが内容的にはもっと長い時間掛かっている印象でした。ヒロイン達との触れ合いの時間もシリアス展開になってからの時間ももっともっと長くて良かったかなと思いました。ちなみにこの作品はEDが数種類あります。選択肢の数もそれ程多くありませんので割と簡単に全てのEDを見れると思いますが、余裕があれば既読スキップせず一から全てテキストを読みながらリスタートするのをオススメします。二週三週する事できっとヒロインに対する理解が深まりますし、この作品の世界観に対する理解も深まると思います。全てのテキストを読んで頂き、是非タイトルにある「金魚」の正体を掴んで欲しいですね。


→Game Review
→Main


以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<一人では出来なくても二人、三人と信じれる人がいることで前に進むことが出来る>

 全てのテキストを読んでとにかく設定の深さに驚きました。緋奈とヒナの真実や金魚の正体、そして言箱機関の実態とズン太やマーニャの正体、一人一人がそれぞれ重い背景を背負って生きている事が分かりました。人の想いの重さと命の重さの両方を抱える言箱機関、そしてその最前線で動いている緋奈とヒナ、本当であれば人の心なんて当に無くして機械的に仕事をこなしてしまっていそうですが、そこは二人の心の中にお互いを思う気持ちがあった事と勇次の人間性のおかげであのEDまでたどり着けたのかなと思っております。

 ズン太が「自分の口で伝えられるなら、言箱はいらない」と言ってましたが、このセリフの意味は結構重いものでした。自分が生きていて相手に自分の思いをを伝えられるチャンスがあるのであればそれは大変幸せな事です。一番辛いのは相手が自分のことで悩み苦しんでいるのにそれを唯一解消できる自分自身が何も出来ない事です。だからこそ金魚は言箱を生むのだと思います。生んだ言箱が結果として生きている人を更に苦しめるのであればそれは残念ながら捨てなければいけませんが、そうではなく生きている人に少しでも希望を与えられるのであれば積極的に言箱を持っているべきだと思いました。そういう意味でも言箱機関の重みは大変大きく、しかも世襲制ですのでよくもまあ緋奈とヒナは心を壊さずに仕事を続けられたと思っております。

 そしてそんな言箱を生む金魚の正体は人間の魂でした。死んでなお未練が残る人間が金魚として現世に残り言箱という形で想いを残してきました。そして金魚は自分自身の思いだけではなく他の死者の想いも言箱に残します。それは大変心を痛めることであろうと想像できます。だから金魚の寿命は短いのかも知れませんね。平均して1週間と言ってましたが、それはおそらく金魚鉢の環境や水や酸素の状態だけではないと思いました。緋奈が「金魚鉢に閉じ込められた金魚でも水槽なら長生きする」と言ってました。そんな心を痛める仕事をしている金魚ですので、一匹ずつ孤独な金魚鉢に閉じ込められるよりは水槽で皆といた方が長生きできるのは当然ですね。

 この一人ではなく二人という話もまたこのシナリオの中では特徴的でした。作中でも「一人なら泣けなくても、二人なら泣ける」「手を振るのは1人でも出来るが握手は2人でなければ出来ない」と二人であることの大切さを強調する記述が多くありました。そしてこれがきっとこの作品で一番伝えたかったことなんだろうと思っております。世襲制である貴舟家では緋奈とヒナは一緒の環境で育つことが出来ず基本交代交代で生活してました。ですがいつしかその役割は固定化され、二人は別々の時を生きる存在になってしまいました。それでも言箱機関を役割を認識してましたので自分の運命を受け入れてましたが、心の中では一緒に生活したり仕事をしたいと思ってました。そしてそれを可能にしたのは勇次の存在だったのかなと思っております。

 だからこそ私は勇次が二人を愛するEDが唯一にして一番のEDだと思っております。倫理的には勿論許されませんが、あの方法しか二人の心を溶かすことは出来ないと思っております。その決断をした勇次、立派ですね。勇次の気に入っているところは基本的にヘタレ感を出していながらも決断するところは決断するところです。そしてその決断に世間体ですとかそういった部分を挟まないところですね。と言うよりも目の前にいる二人の心を溶かすことが出来れば、それで十分なんです。色々と壁にぶつかったりと悩むことは多々あるかと思いますが、きっとこの三人であればどんな障害でも突き進んでいけるんでしょうね。一人の孤独を知っているからこそお互いの絆も信じれるのだと思っております。まとまりませんが今回はこの辺りで締めたいと思います。ありがとうございました。


→Game Review
→Main

inserted by FC2 system