M.M 怪獣憑きの少女


<正義感があり真っ直ぐな主人公がどのように怪獣に関わっていくかに注目して欲しいですね>

 この「怪獣憑きの少女」という作品は同人サークルである「KOSMONAUT」で制作されたサウンドノベルです。C85で同人ゲームサークルを回っている時に入手したのですが、KOSMONAUTさんの前回作である「夢見る天使は眠らない」が短いながらも伏線の貼り方と主人公の性格が気に入っていたので今回の「怪獣憑きの少女」は絶対買おうと決めておりました。感想ですが、真っ直ぐな主人公の心意気が光るシナリオ展開に心が熱くなりました。

 OHPをご覧になれば分かりますが、この作品は怪獣という人類を脅かす存在がいる現代の世界です。主人公もかつて怪獣による災害に巻き込まれ最愛の家族を失っている過去を持っております。当然主人公は怪獣に対して強い恨みを持っており、それがトラウマとなって日常生活の中でも過去の記憶を連想させる場面に出会うと気分を悪くしてしまいます。それでも正義感にあふれた性格は非常に前向きであり、裏表なく人と向き合えますので主人公の周りには愉快な友人やバイト先の気さくなオーナーや世話好きな従姉など信用の置ける人物が集まっております。そんな主人公ががヒロインである守部ひなと出会うところから物語は始まっていきます。

 最大の見所はやはり怪獣の描写ですね。ゴジラのような存在を思わせる怪獣の描写は大変細かくリアルであり、恐怖感を演出することに一役買っております。そして怪獣がいるということでこの世界にはそれに対抗するM-Forceという機関が存在するのですが、戦闘機による攻防の様子やパイロットの会話なども臨場感にあふれており戦闘の状況を肌で感じることができるようです。そしてこの作品のタイトル名から想像できると思いますが、ヒロインである守部ひなは怪獣に対して非常に重要な役割を持っております。この怪獣・M-Force・守部ひなの関係に主人公がどのようにアプローチしていくのか、これからプレイされる方にはその点を注意してシナリオを勧めて頂ければと思います。

 ちなみにプレイ時間としましては私で1時間45分で読み終わりました。場面がどんどん展開されていきますので気がつけば終わってしまっていたという印象でした。この作品は主人公が正義感強くて真っ直ぐなキャラクターなのも魅力の1つなのですが、それ以外のキャラクターにも悪人はおらず自分が正しいと思ったことを貫き通せる人物ばかりです。そういう意味でとにかくプレイヤーの方は表示されていくテキストを読み、未来の展開を想像しながら一気にEDを目指せば良いと思います。怪獣とヒロインの関係はどうなっているのか、主人公はどのように関わってくるのか、物語の結末はどうなるのか、多くの事を想像しながら楽しんで頂ければと思います。そんな作品でした。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<振り返れば主人公の決断力と行動力が光るシナリオでした>

 思い返せば主人公とヒロインの一途な想いが印象に残るシナリオでした。10年前にお互いがお互いに何が起こったのかを知らない為に生じた些細なすれ違い、ですがその誤解もお互いが自分の気持ちを正直に相手に話すことで解かれていきました。最後に2人で力を合わせて怪獣を倒すシーンは素直に良かったと思えました。

 ヒロインである守部ひなが怪獣を倒すためにイルガを召喚でき、大戸市を守るための力を持っていることは物語のはじめの方で提示されておりました。ですがその力を持っている事による葛藤については他の人が知るところではなく、最後の直前まで自分の命を捨ててでもゼゴラを倒そうという一種の投げやりな気持ちで戦いに望んでました。事実ゼゴラのちからは強力であり、M-Forceの軍事力ではまるで歯が立たない現状でしたのでイルガに頼らざるを得ないという状況も守部ひなの気持ちを後押ししました。

 ですが守部ひなが例え命を捨ててゼゴラを倒したとしても、それでは本当の意味で幸せな結末にたどり着くことができませんでした。それは守部ひなを失うことで主人公を始め多くの友人が悲しむということもありますが、何よりも守部ひな自身が死にたいとは思っておりませんでした。出来るのであれば主人公と一緒に未来を歩みたいという囁かな願いを持っておりました。それでもそんな自分の願いに目をつむり、世界のために怪獣と単身戦おうという決意はそれこそ一種の諦めを伴ってなければとても踏み出せるものではなかったと思いますね。

 だからこそ最後の最後で主人公が守部ひなのところに駆けつけた時、そして主人公が「ひなのことが好きだ!」と告白してくれた時、本当の意味で守部ひなは生きたいと強く願ったのでしょうね。この人とずっと一緒にいたい、この人を1人にしてはいけないと思ったからこそ、劣勢だった戦いも勝利に導くことが出来たのだと思っております。最後はやはり相手を信頼する想いが世界を救う、少年漫画的で王道な流れではありますが非常にスッキリしました。やっぱり誰も不幸にならず全員が生きてこそのハッピーエンドだと思いますね。

 振り返れば主人公の決断力と行動力が光るシナリオでした。序盤でチンピラに絡まれているひなを助けるために単身特攻したところやイルガを召喚している時に何度もひなに触れようとしたところ、そして最後に戦場のど真ん中に1人で突っ込んでいくところなど全て主人公の素直な想いがにじみ出ておりました。そしてそんな真っ直ぐな主人公の想いに周りの人も応えてくれたからこそ、今回主人公もひなも死なずゼゴラを倒すことができたのだと思います。全員が正しいと思ったことを行動にしてくれたからこそのあのEDでした。久しぶりにスッキリすることができたシナリオでした。ありがとうございました。


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