M.M 果てしなく青い、この空の下で…。


<田舎を描くための現実感>

 いわゆる「田舎ゲー」というゲームがありますが、この「果てしなく青い、この空の下で…。」というゲームはその代名詞とも言えるようなゲームです。田舎の雰囲気もさることながら、シナリオもなかなかおもしろいという評判を聞きましたので、早速プレイしてみました。

 前にも言ったとおり、このゲームの特徴として「田舎」という物を綺麗に描いているという点が上げられます。しかし、その描き方は一般のゲームとはかなり違います。その特徴として始めに、絵の塗り方があります。この「果てしなく青い、この空の下で…。」というゲーム、背景も立ち絵もまるで水彩画で描いたようなやわらかさがあります。その分確かに綿密に書かれている訳ではありませんが、田舎の雰囲気がしっとりと伝わってきます。次の特徴として、キャラクターの描き方があります。一般のギャルゲーは多種多様なキャラクターがいて、誰にでも満足してもらえるようなキャラクターを作っていますが、このゲームの場合はそういった「ゲームのキャラクター」といった雰囲気を全く受けません。本当に現実世界に存在するかのような性格のヒロインばかりが登場しますし、言い方を変えますと「ご都合主義」的なヒロインは登場しません。その辺りの現実感が、田舎という雰囲気を後押ししていると思います。最後の特徴として、音の使い方があります。田舎という事で、効果音に拘っているのはもちろんなのですが、BGMが五月蠅くないのが特徴です。必要最低限のBGMを使用する事で、不必要な演出をする事をさけ、本当の意味で田舎という物を表現していると思います。

 そしてシナリオですが、田舎ゲーだからといって決してまったりとのどかに進行していくわけではありません。あくまで舞台が田舎というだけであって、シナリオは春から一年間の主人公の周りの出来事をリアルに描いています。このリアルという表現ですが、このゲームのシナリオは一般的な「恋愛シュミレーション」ではありません。確かにシナリオの中に恋愛という要素は入って来ますが、これは決してメインではなく、真のテーマは別にあります。それを描く過程が非常に現実的なのです。一つの小説を読むつもりでゲームを進めていくと良いと思います。

 こうして見直してみると、この作品の特徴として一般的のギャルゲーにはない現実感が目立ちます。そして、これこそがこのゲームの最大の魅力ではないかと思います。ともすればやや硬い印象を与えるゲームかもしれませんが、こういった新しい雰囲気の提案は今後のギャルゲーの幅を広げる物になると思います。

 ちなみに一つ気になった点を言いますと、選択肢がやや難しいです。基本的に前半部の選択肢でキャラクターの分岐が決定し、後半部の選択肢でエンディングの分岐が決定するのですが、かなり頭を使う選択肢が多いです。何度かセーブとロードを繰り返す事となると思います。

 とはいえ、そんな選択肢の難しさを全く忘れさせてくれるようなシナリオです。時間に余裕があったら是非やって貰いたいです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<見事なまでの矛盾の無さと構想の巧みさ>

 このゲームの素晴らしいと思うところとして、どのルートに行ってもシナリオはそれなりに変化しますけど事実関係の流れは全く変化しないという事があります。このゲームの中で重要な要素はやはり、ヤマノカミとそれに関わっている人々とのつながりになってくると思いますが、どのルートにいっても攻略対象以外の各キャラクターに降りかかる運命は変わらないのです。芳乃雨音は堂島家で精神をズタズタにされ、穂村悠夏は神社を燃やされ、松倉藍は墓守に取り付かれ、松倉明日菜は第三世界の生贄にされ、八車文乃は復習の為に行動し、堂島はヤマノカミに殺されるといった感じで、あくまで主人公の行動によってシナリオが変化するようなシステムとなっています。これは各シナリオによって矛盾が生じないようにするという意味があり、ゲームの雰囲気を崩さないことに繋がると思います。

 しかし、このゲームに限ってはこのシステムは別の意味で重要となってきます。それは、それぞれのシナリオから得られる情報をまとめる事によって、ヤマノカミの全貌が明らかとなるというシステムになっているからです。正直言ってこのヤマノカミについて正確に理解する事はかなり難しいですし、一人二人終わっただけでは意味が分かりません。しかし、四人五人と終わってくると何となく意味が分かってきて、最終的に整理すると見事なまでに矛盾がなく納得できる流れとなっています。これは正直素晴らしいと思いました。

 しかし、好きになれない部分もありました。それは、やたらと理不尽なHシーンが多かったという事です。シナリオの都合もありますし、キャラクターの心理状況に意味を持たせるという意味でも不必要であるとは思いませんが、さすがにあそこまでされると折角の田舎の雰囲気も心の底から堪能できなくなると思いました。ただのHシーンなら良かったのですが、いささか凌辱系が多すぎました。

 ちなみに、このゲームはしおりというシステムがありますが、これはしおりの中で五人のグッドエンディングのみを見ないとおまけが開かないシステムだからです。一つもバッドエンディングを見てはいけないという条件は厳しすぎますので、私は攻略サイトをみて終わらせました。なので、バッドエンディング用とグッドエンディング用の二種類のしおりを用意した方が良いかもしれませんね。


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