M.M EVER17 -the out of infinity-


<シナリオの壮大さと構想の巧みさ>

 この「EVER17 -the out of infinity-」というゲームは、始めからPS2やDCをプラットホームとして発表されました。それなのですが、多方面からシナリオが良いとの評判が後を絶えませんでした。実際私がプレイしたきっかけも、友人からゲームを借りた事でした。いい加減返さなきゃという思いでとりあえず始めたのですが、これ程までシナリオ綿密に作ってあるゲームはほぼ無いと思います。

 ここで断っておきますが、このゲームをプレイしようと考えている方は決して「ネタバレ」のレビューを読んではいけません。どのゲームも基本的にネタバレは厳禁なのですが、このゲームの場合はネタバレを喰らうと面白さが激減します。それほどまでに、このゲームのシナリオの壮大さと構想の巧みさは大きいのです。そこには、このゲームでしか見られない幾つかのこだわりがありました。

 まずそのこだわりの一つとして、伏線の巧みさです。このゲームには全部で5人のヒロインがいるのですが、1人の核になるヒロインのシナリオは最後にのみプレイできます。おそらくこれからプレイされる方は、始めの4人のシナリオに点在する無数の謎に苦しめられる事になると思います。しかし、最後のヒロインのシナリオをプレイする事によってその謎がまるでパズルのピースをはめるが如く綺麗に解かれていくのです。その中には、物語の本質に関わるような重要な物ももちろん含んでいます。多少前半部分で飽きるかもしれませんが、何としても最後までやり遂げてみてください。鳥肌が1時間も止まらなくなるような衝撃が待っていると思います。

 次のこだわりとして、「現実感」を徹底的に書き上げたという事です。このゲームの設定を簡単に言いますと、海洋テーマパーク「LeMU」の浸水事故によって、何人かの人間が閉じ込められたというくだりから始まります。こういった設定の場合、様々な事象を物理的考えて捉えないと、現実感の無いただのファンタジー的な内容になってしまいます。ここでこのゲームの凄いところは、そういった物理的な事象をこれでもかと言うくらい細かく丁寧に書いています。圧力の問題を始め、温度、波動、電磁気といった内容に対して妥協が無いのです。なので、プレイヤーはこのフィクションを現実的に捉えて物語りを読み進める事ができます。

 もう一つのこだわりとして、「17」があります。タイトルにもあるこの17と言う数字ですが、このゲームに登場するありとあらゆる数字が17に関係しています。これはシナリオとは直接関係がないことなのですが、文中に登場する数字を注意深く見てみるとかなり面白いと思います。

 前にも言ったとおり、前半部分はたしかに飽きるかもしれません。しかし、最後のヒロインを終えるまで決してあきらめないで進めてください。その先には、必ず感動が待っていると思いますので。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<最後の最後でファンタジーか>

 私がこのゲームをやって初めて良かったと思ったところは、武編と少年編との間に「17年」の隔たりがあると分かった時です。これこそ、このゲームの最大にして最重要なポイントだと思います。

 シナリオの前半部は、如何にしてこの「17年間」に気づかせないで伏線を張れるかに焦点が置かれています。武編と少年編での微妙な違いは少年の記憶の問題のように思わせて、一概にもそうとは言えない雰囲気を作っています。プレイヤーは、一度この罠に陥ってしまうともはや物語の後編で真実が語られるまで決してこのトリックから抜け出せないと思います。だからこそ、「17年間」に気づいた時の衝撃は計り知れないと思います。

 そして、このゲームのトリックはこれだけではありません。「17年間」という最大の伏線を始め幾つかの伏線が分かっても、それによって出来上がるパズルの絵が最後の最後まで見えないのです。簡単に言うと、伏線の謎が解けたのに物語の謎が全く解けていないということです。つぐみシナリオであの後武はどうなったのか、優シナリオで上にいた人と何を話したのか、ココは結局のところどうなったのか、こういった伏線ではない物語上の謎が幾つも残っていました。なので、これらの謎が解けるまで画面から目が離せませんでした。

 ただ唯一残念だった事は、最後のオチが今まで丁寧に作ってきた「現実感」とはかけ離れたまさに「奇跡のファンタジー」とも言える内容だったことです。まだ第3の目や各種ウィルスの設定までは良かったのですが、生身の人間が119mの潜水をするとか、海底で一度は心配停止になった人間が蘇生するとか、17年間ライプリヒ製薬の隠蔽がばれなかったとかいった内容にはかなり無理があると思いました。まあ、最終的には全員生きてるハッピーエンドになってよかったのですが、こういった細かい部分にもう少し気を使ってくれればよかったなぁと思いました。

 とは言え、シナリオのスケールの大きさはやはり圧巻です。ある意味これを超える作品は出ないのではないかと思います。時間があれば前後作である「Nexer7」「Remember11」もやってみたいですね。


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