M.M 蝶々髑髏 -漸篇-


<前作より細かくなった表情差分と効果音の種類でより登場人物達に寄り添う事が出来ました>

 この「蝶々髑髏 -漸篇-」という作品は同人サークルである「YUKIRINS」で制作されたビジュアルノベルです。「YUKIRINS」さんの作品では過去に「石榴の時計」という作品をプレイしたことがありまして、正統派のミステリーであり登場人物の魅力が引き立つ読み応えのある文章が印象に残っておりました。今作である「蝶々髑髏 -漸篇-(以下ドクロ)」も「石榴の時計」と同じ舞台設定・登場人物という事で是非プレイしようと思いレビューに至っております。感想ですが、前作以上にキャラクターの魅力が引き立つ内容でありミステリーとしての面白さも相変わらず流石でした。

 上でも書いておりますが今作は前作である「石榴の時計(以下ザクロ)」の続編となっております。大正時代を舞台としており、主人公でありヒロインである香山理穂子と探偵である紫藤直樹を中心として繰り広げられる殺人事件の謎に挑んでいくシナリオです。その為ザクロをプレイしている方であれば登場人物の性格が分かっておりますのですんなりと物語に移入することが出来ると思いますが、ザクロをプレイしてなくてもネタバレはありませんのでこちらから入っても問題ありません。正統派ミステリーの第2弾として楽しんで頂ければと思います。

 そしてザクロと比較して幾つかの点で改良されている部分が見受けられました。まずは立ち絵の差分が増えている点です。特にヒロインである理穂子の表情の種類がかなり増えてましたので細かな感情が伝わりよりキャラクターに寄り添う事ができました。もう言ってしまえば表情豊かなキャラクター達の魅力が増したという事です。これだけで文章を読む楽しさが増えるというものですね。後は効果音の種類も増えてました。特にこの作品はミステリーであり殺人事件のシナリオですので人の叫びというものがよく描かれるのですが、その種類が結構増えてました。場面場面で使い分ける叫び声により一層のこだわりを感じました。

 そしてシナリオですが、やはり天真爛漫な理穂子のキャラクターが事件の謎にどんどん食い込んでいきます。このあたりはザクロと変わりませんね。ですが今作はザクロと違いミステリー一辺倒ではありませんでした。内容的にはネタバレですのでここでは書きませんが、殺人事件を解き明かす裏側で登場人物達の心のぶつかり合いが発生しております。そういった人間模様も楽しめますのでプレイヤーには是非事件の犯人だけではなく物語の結末についても推理して頂きたいですね。

 そしてこの作品はまだ前編です。プレイ時間は私で3時間30分でしたが、まだまだ事件の謎が分からない段階で結構急激な展開を見せてくれました。犯人の正体もそうですが本当に登場人物達がどのような行動をとるかで結末が全く読めませんので、出来るだけ登場人物達の気持ちに寄り添いながら読み進めていこうと思います。とにかく登場人物達の細かな感情の揺れをセリフ・文章・表情差分から読み取って是非蝶々髑髏の謎を解き明かして欲しいと思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<理穂子を巡る男2人の気持ちのぶつかり合いが今作の見所だと思うのです>

 上でも書きましたが本当に理穂子の天真爛漫さがこの作品の要になっているのではないかと思うほど可愛かったです。いきなりドレス姿で登場し東野高志との初々しい様子と見世物小屋を見たいけれど言い出せないもどかしさが交錯したデートは一発でプレイヤーの心を掴んだのではないかと思います。そしてその後に紫藤直樹と見に行った見世物小屋、まさかその現場で殺人事件が起こるとは本人も思いもしなかったでしょうね。この理穂子の対比が今作でとても強調されていたと思いました。

 理穂子にとって遠野高志と夫婦でいる事と紫藤直樹と探偵をやっている事とどちらが幸せなのでしょうね。大正時代という時代背景を考えれば遠野高志を選ぶのが懸命なのでしょうけど、理穂子の天真爛漫さを全面に見ることができる紫藤直樹の方が幸せなのかもしれません。ですが理穂子もそこは立場を弁えており、超えてはいけない一線は頑なに守り遠野高志を慕っております。この真っ直ぐなところも彼女の魅力なのだと思いました。

 そんな理穂子の心情を知っているからこそ、今回の遠野高志と紫藤直樹のぶつかり合いは大変ハラハラしました。ハラハラしましたが、お互いがお互いの立場で理穂子の身を案じている事は伝わりましたのでこれであれば理穂子はどちらに傾いても後悔する事はないと思います。というよりも、個人的には遠野高志の内面がよく見れたのが嬉しかったですね。ザクロの時はそこまで出番が無かったので実際どんな人物かは知りませんでしたが(赤い華は読んでいましたので気概のある人物であるという事は知ってました)、今回は全面に出てきてますので今後どのように活躍するかが気になりますね。

 そしてそんな2人の決定で探偵助手を下ろされた理穂子、そんな理穂子が2人のためにお萩を届けるところから事件は思わぬところへ舵を切ることになりました。紫藤直樹はさぞ自分がそばに居なかったから理穂子を見失ってしまったと後悔しているでしょうね。それは遠野高志も同様でしょうが、事件の中で初めて探偵助手を下ろした展開ですので、この辺もどのように物語が動くのか楽しみです。後編が出るのを心待ちにしております。


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