M.M Clover Day's


<Clover Heart'sのテーマである「穏やかな日常を丁寧に描くという事」を再現した心温まる作品>

 この「Clover Day's」は、2014年に「Alcot」から発売されたサウンドノベルです。もうこの業界に詳しい人であれば説明不要かと思いますが、Alcotの処女作である「Clover Heart's」と同様の流れを汲んだ作品であり、Clover Heart'sを思わせる演出が随所に登場してきます。またこの作品はAlcotの10周年記念作品でもあり、10年前に発売されたClover Heart'sを原点回帰として制作されたのかも知れません。Clover Heart's同様の心温まる思春期の男女が織り成す物語がそのまま再現され、久しぶりに穏やかな気持ちになることが出来ました。

 上でも書いておりますがこの作品を語る上でやはりClover Heart'sを欠かすことは出来ません。直接の続編ではありませんのでClover Heart'sをプレイされなくても問題はありませんが、Clover Heart'sを過去にプレイされた方であれば是非今作もプレイして欲しいですね。それ程までにClover Heart'sで表現された「穏やかな日常を丁寧に描くという事を」再現しております。この作品、シナリオの進行という意味では非常にゆったりとしております。劇的な場面転換は殆どなく日常の描写の中での男女の掛け合いがテキストの殆どを占めております。趣向によっては間延びしていると思う人もいるかと思いますが、この日常の描写こそ私がClover Heart'sで一番魅力だと感じている所であり今作の魅力にもなっていると思っております。

 そして今作はAlcotの10周年記念作品と上で書きましたが、シナリオの中でも10年前と現代の行き来を頻繁に繰り返します。プレイヤーの方には是非主人公とヒロインの間で10年の間にどのような気持ちの変化が生じたのかに思いを馳せながらプレイして欲しいですね。思春期の男女の物語ということで10年前となりますと小学生くらいの年齢となります。何も不安なことがなく自分の思うままに日々輝いた時間を過ごすことが出来る年代です。そんな時に知り合った男女が思春期を迎えてどのような変化が生じているのか、また10年前に抱えた想いが現代になってどのような形で蘇るのか、この微妙な心理状態を是非日常の会話の中から感じて頂ければと思います。

 他にもBGMや背景など様々な場面でClover Heart'sを思わせる演出が成されております。その中でも最大の特徴はやはり双子のヒロインが多く登場する点だと思います。Clover Heart'sをプレイされた方であれば分かりますが、ヒロインが金髪ツインテールの象徴的な双子であることに加え主人公も双子でした。今作は主人公こそ1人ではありますがメインヒロイン6人の中に2組の双子が登場しております。双子特有の心の通わせ方はこの作品の中での一番の見所であり、ヒロイン個別ルートに入っても片方の双子のヒロインの存在は鍵になってきます。ましてやこの作品は思春期の男女の物語です。双子という事で主人公とヒロインがすんなりと結ばれるシナリオに収まるはずがありません。もどかしくも葛藤しながら前へ進もうとする主人公とヒロインの心の揺れ動きを是非味わって下さい。

 という訳でClover Day'sのレビューでありながら半分Clover Heart'sのレビューになってしまいました。ですがそれだけこの作品とClover Heart'sは密接に繋がっており、思春期の男女の揺れ動く日常を丁寧に描いた作品として最高レベルにまとまっているものとなっております。ちなみに私で全シナリオ読破まで25時間かかりました。それでも日常の描写が大変丁寧でクリックする手が止まることはありませんでした。場面転換が緩やかでありながら間延びする事のないテキストはさすがAlcotといった感じですね。一気に全てのシナリオを読み進めても構いませんが、時間に余裕のある方であれば是非1日1ヒロインのペースでゆっくりと噛み締めながら読み進めて頂ければと思います。Alcotの10周年記念作品としての本気を是非感じて下さい。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<互いを信頼し大切にする想いはどんな障害でも乗り越える力になる>

 素直に感動しました。揺れ動く思春期の男女の気持ちがストレートに伝わってきました。相手を想いながらもそれを伝えることで今までの関係が壊れてしまう事の怖さ、その狭間で悩み苦しむ姿は単純に応援したくなりました。そして最後には誰もが納得し幸せになれるシナリオでとても安心しました。

 まずはAlcotのスタッフの皆さんにはこれだけ心温まる作品を作って頂き大変感謝申し上げます。そして私のお気に入りであったClover Heart'sを見事に現代に蘇らせて頂いたことも嬉しかったです。ヒロインを攻略していく度に変化していくタイトルBGM、中間部にセリフの入ったOPムービー、挿入歌として復活を遂げたClover Heart's、屋敷のメイドさん・飛鳥凛・西園寺先生と懐かしのサブキャラ、港の見える丘公園を始めとしたClover Heart'sと同じ舞台の背景などとにかくどこを見てもClover Heart'sでした。個人的に一番嬉しかったのはBGMの「a memories for us」が新アレンジで復活したことですね。この曲はClover Heart'sの中で一番好きな曲でして、しかも今作でもここぞという場面で使ってくれましたので大変テンションが上がりました。本当にAlcotのスタッフの皆さんはClover Heart'sに思い入れがあったんだなと感じました。

 そして肝心のシナリオですが、どのヒロインのシナリオも自分の想いを口にすることで周りとの関係を壊すことの葛藤を描いておりました。杏鈴と杏璃は10年間ずっとお兄ちゃんの妹として接してきただけにお互いの気持ちが手に取るように分かります。それだけに今の家族としての関係が壊れることを恐れて1歩前に進む事ができてませんでした。ヒカルとヘキルについてもヒカルがずっと優人への想いを殺してヘキルと結びつける事を考えてました。その反動でヘキルと優人が付き合ってる様子を見る事ができず家を出てしまいました。つばめと泉は双子ではありませんが、初めからお互い優人が好きな事を認識しており互いに遠慮して出し抜かない事を決めておりました。それも友達関係を壊したくないという思いの表れでした。

 ですがヒロイン達が心配していた事は実際はそこまで問題ではありませんでした。と言うよりもぶつかる事がもう確定的であって誰かが優人と付き合えば必ず誰かが傷つくことは避けられない事でした。それだけに後は友達や双子としての関係を壊してでも優人と添い遂げたいと思える覚悟だけが必要でした。でもそんな覚悟を持っているのは告白したヒロインだけではなく告白できなかったヒロインも同様でした。ああ、自分は選ばれなかったんだなと本心を言えば悔しいのだと思います。ですがそれと同時に優人の幸せも願ってますので、たとえ自分が選ばれなくてもその事で友達や家族とお互いに絶交するなんてことはなく自分に納得して前に進もうとしました。この清々しさもまた思春期の男女の持つ魅力だと思いました。

 そして覚悟を決めたのはヒロインだけではなく中心にいる優人本人もでした。特に杏鈴と杏璃は妹という関係を壊さなければいけませんでしたので世間体も含めて自分たちの想いが揺るがない決心が必要でした。ましてやヒカルとヘキルについては2人を同時に恋人にする決意をしました。正直このヒカルとヘキルのエンディングにはかなり驚きましたので。当人たちが納得していても世間的には絶対異常に思われますからね。それでも2人を同時に愛することを決めた優人は主人公の鏡ですね。最後の3Pはもう自身をエロゲ屋と称している宮蔵氏渾身の作品だと思っております。

 という訳で個別シナリオについて色々と語っても構わないのですが、日常の描写を丁寧に描いている今作においてそれは野暮ったいと思いましたのでこの辺りで締めたいと思います。全てのシナリオにおいて自分の想いと相手の想いを信頼する物語は心温まるものであり、そんな相手を思いやる力はどんな障害でも耐える事が出来る物だと思いました。たとえ相手が生徒会でも世間体でも身内でも大企業でも、互いを大切にする想いというものを持ち続ける事が大事なのかなと思いました。そんな何者にも代え難い気持ちを手に入れた2人ですので、これからも末永く幸せに生活していくのだと思います。ありがとうございました。


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