M.M 浅葱妖怪相談所。


<純和風であるという事を背景、BGM、立ち絵、システムの全てを活用して表現していると思いました>

 この「浅葱妖怪相談所。」という作品は同人サークルである「あまてる。」で制作されたビジュアルノベルです。私が「あまてる。」さんの作品に初めて触れたのはCOMITIA108でノベルゲーム部のサークルを回っているときでして、とにかく華やかで楽しそうなジャケットが印象に残っておりました。この時購入したのは「浅葱妖怪相談所2」だったのですが、一作目であり今回レビューしている「浅葱妖怪相談所。」も入ってましたのでまずはこちらからプレイしてみました。感想ですが、透明感のある立ち絵や背景に加えて和風なBGMと軽快に動くシステムが和風で明るい雰囲気を作ってるんだなと思いました。

 公式HPをご覧になれば分かりますが、主人公である葵は新米の陰陽師です。ですが彼女の元に相談に来るのは何故か妖怪ばかり。そんな自分の人徳のなさに嫌気がさしていたある日、やはり1匹の妖怪が相談にやってきました。妖怪の名前は「ふう」と言いまして、相談内容は「最近毎夜毎夜、怪しい物音がするんです。」という物でした。もう陰陽師でもないまるで何でも屋の様な依頼でしたが、この1つの相談が葵の陰陽師としての転換点になります。

 とまあこんな感じのあらすじですがシナリオ的には約30分で終わりました。この作品の魅力はシナリオ以上にパズル的な謎解きとその他全ての要素をふんだんに活用して作り上げている和風の明るい雰囲気にあると思っております。全体のプレイ時間で私は40分掛かりましたが、そのうち半分は謎解きに費やしてました。マウスを使って画面をクリックして調査したり、時には文字をキーボードで入力して進む感じは久しぶりで、ただ文章を読むだけではないビジュアルノベルの楽しさを思い出す事が出来ました。そしてそんなパズル的な作品という事もありシステム的に大変サクサク動きます。このストレスレスなところも好印象ですね。ちなみに謎解きのレベルとしては決して難しくはありませんが、閃きが寛容だと言っておきます。仮にわからなくても公式HPに答えがありますので安心してください。

 そして陰陽師が登場したり妖怪が登場するという事で設定的に純和風の作品であることは言うまでもありませんが、純和風であるという事を背景、BGM、立ち絵、システムの全てを活用して表現していると思いました。立ち絵は水彩画のような透明感であり、着物や小物のリアルさを感じる事が出来ました。背景は時に写真を取り入れておりこれもまた現実感を出しておりました。そしてBGMが個人的に一番お気に入りで、和の楽器を使っている事も勿論ですが基本穏やかでさざ波の様な雰囲気のものが多く日本の文化である「間」を意識する事が出来ました。プレイヤーの皆さんには是非この純和風の雰囲気だけでも感じて頂ければ良いのかなと思っております。

 という訳で心地よい雰囲気の中でちょっとしたパズルを楽しんでいるうちにあっという間に終わってしまいました。上でも書きましたがトータルのプレイ時間は私で40分でした。現在公式HPでフリーでDLできますので、ちょっとした気分転換と言いますか心の落ち着かせたい方は是非プレイしてみては如何でしょうか。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<困っていたり想いを託したりするのは人も妖怪も同じ>

 素直に楽しかったです。謎解きは本当に頭の体操といった感じで楽しみながら解くことが出来ました。そして作品全体に漂う和風の雰囲気と葵の素直な性格も大変お気に入りで、今後の彼女の活躍に期待ですね。後は浅葱家の過去や兄の抱える物についても知りたくなりました。

 この作品は葵にとって本当の意味で陰陽師になる為のプロローグでした。陰陽師としての技術は身につけていてもまだ陰陽師としての心は身につけていなかった葵、きっと今回のふうの依頼はそんな中途半端な葵の心を引き締める為に兄が用意したのかなと思っております。最後に葵は「私、まだまだ未熟だけど、きっと頑張るから…!」と決意を現わにしていましたが、この未熟という言葉には技術もそうですが何よりも「困っていたり想いを託したりするのは人も妖怪も同じ」という事に気がつかなかった心の狭さを表現しているのだと思いました。そして自分の力量を客観的に見て、妖怪しか来ないのならまずはその妖怪の悩みから解決しようと前向きに捉えることが出来ました。陰陽師として、そして一人の人間として一歩成長できたエピソードだと思っております。

 そしてこの作品の面白いところは謎解きもそうですがEDが終わってからのおまけ要素にもあると思いました。おまけストーリーは初めは選択肢2つを選ぶだけかと思いましたが2つ見終わった後に3つめの選択肢が現れました。そしてその3つめのEDを見ることであとがきが開きました。謎解きは本編だけではなくこんなところにも隠されてました。繰り返すたびに新たな選択肢が増えていくこの演出、大変な拘りを感じました。そしてその3つ目の選択肢でちょっと触れられた浅葱家の過去と兄の抱えるもの、これについては次回作以降で語られると思っております。既に次回作はPCにコピーしてますのでこのレビューを上げてからひと呼吸置いて早速プレイしようと思います。という訳で大変楽しい作品でした。ありがとうございました。


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