M.M AR 〜忘れられた夏〜


<水夏とは無関係の、全く新しいゲーム>

 この「AR 〜忘れられた夏〜」と言うゲームは、老舗ブランド「circus」から出された「水夏の続編」として位置づけられたギャルゲーでした。HPなどを見る限りでも水夏の雰囲気を組んでいるような世界観で、水夏を最強のギャルゲーとしている私にしてみれば期待するなと言う方が無理な話でした。とはいえ、情報が明かされるにつれて水夏らしさが薄れていき、何よりシナリオライターが別人ですので、過度の期待はしないでプレイする事にしました。結果としては、水夏とは全く違う雰囲気のゲームでした。

 HP上での水夏とARの共通点は、まず舞台が田舎だという事、そして登場キャラクターに水夏の「名無しの少女」のような風貌のキャラクターがいること、そしてARのトップページの挿絵に水夏の「アルキメデス」のようなキャラクターがいることでした。この時点でシナリオライターが水夏を意識している事は間違いありません。そして、シナリオ紹介を見てみてもどことなく田舎の雰囲気の世界観の中で繰り広げられる純愛的なシナリオを予感させました。

 しかし、後に公開されたシナリオ紹介を見ると、田舎とはかけ離れたまるで戦争をしているかのような世界観が描かれていました。この時私は何となく感じました、「ああ、これは水夏とは別物だな」と。しかし、これはこれで別の期待感を私に持たせました。別に、水夏と同じ路線でなくても良いゲームは幾らでも作れますし、下手に水夏を目指してシナリオを作るよりは、むしろ違った世界観の方が新鮮味があって良いと思ったからです。

 そして、そういう意味では非常にメリハリの利いた内容でした。田舎部分と戦争部分は一つのシナリオとして繋がっているのですが、雰囲気や音楽と言った面に関しては全く別のゲームといった印象を受けました。これはむしろ成功で、田舎ののどかな雰囲気と戦争の緊迫した雰囲気がしっかりと伝わってきました。そして、このゲームは以上からも分かるように世界観が膨大です。なので、それぞれの雰囲気を持たせながら伏線を意識せざるを得ないむず痒さはさすがと言った感じでした。

 ただ、そんな「AR」の雰囲気作りですが弱冠気になった点がありました。その一つは「ヒロインの扱い方」です。田舎部分では、ヒロインを中心とする萌え的なシナリオなのですが、戦争部分では打って変って燃え的なシナリオでした。しかし、田舎部分で作ってしまった萌え的要素が災いして、戦争部分でそこまでシリアスになれませんでした。そういったキャラクター性にまで気を配れたら良かったと思いました。あとは「シナリオの説明不足さ」です。最近のcircusの傾向なのですが、世界観が膨大すぎてシナリオが収集していない事がよくあります。このARも同様に、魅力的な世界観をしっかりと説明していません。おそらく多くのプレイヤーは作者から置いてけぼりを食らうと思います。これでは折角のシナリオが台無しです。ライターさんはその辺りに是非とも気を配ってくれてもらいたいものです。

 と言うわけで、このゲームをやろうと言う方はとりあえず水夏のことを頭から切り離してください。そして、難解なシナリオに負けずに是非とも最後まで進んでください。全ては、たった一つの願いの為に。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<惜しい。勿体無い。蛇足。>

 とりあえず「AR 〜忘れられた夏〜」のエンディングを見ましたが、何と言うか細かい部分でかなり適当な印象を受けました。

 基本的に面白いと思いました。田舎部分のほのぼのとした日常も悪くなかったし、その後にやってくる戦争部分もなかなかスリリングでした。しかし、テキストの書き方がその雰囲気の良さを台無しにしていると思いました。シナリオ自体は魅力的なのですが、いかんせん説明的な感じが抜け切れず、間延びした感じになってしまってます。なので、戦争部分とか前半はなかなか面白かったのですが、変化が無いため後半はだらけてしまいました。そして、そんなテンションの中で説明されるこのシナリオの真髄、これがまたかなり難解というか説明不足です。私はここで少しこのゲームとの距離を感じてしまいました。そのあと主人公と名無しの過去が明らかになるなかなかニクイ構想なのに、テンションが上がりきらずに終わってしまいました。

 戦闘パートですが、演出は良かったのですがシステムが単純すぎて後半はただの作業になってしまいました。さすがにあれは難易度が低すぎます。あれだけの技術があるのならもっと本格的なものを作ってもいい気がしました。そして、この際「Tier3 THE LAW」で置いてけぼりを食らったのは百歩許すとしても、その後に待っている「Tier1 〜帰還の夏〜」は明らかに蛇足としか思えません。Tier3で終わっていればまだ綺麗なままで良かったのかも知れませんが、Tier1シナリオの大半は使いまわしですし、オチも盛り上がりに欠けます。

 物語自体は本当に興味深かったですし音楽やCGもよかったと思うのに、テキストの書き方と説明不足さが本当に勿体無く思いました。そして最後の蛇足、これを出すに関してcircus内でもう少し検討に検討を重ねて世に出した方が良かったのではないでしょうかね。一言で言うと「惜しい」作品でした。


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