M.M アマガミ


<ステータスの見える化と能動的な選択システムでゲーム性を獲得した恋愛シミュレーション>

 この「アマガミ」と言うゲームは、2009年に「エンターブレイン」から発売されたサウンドノベルです。発売から何かと話題になっており、2010年にはアニメ化も実現しました。コンシューマの作品と言う事でシナリオの多さやシステムの安定感はもちろん素晴らしいのですが、最大の特徴は久しぶりにゲームしてるな〜と実感させたシステムにあると思います。

 一般に恋愛シミュレーションと呼ばれるゲームは昨今では星の数ほどあり、そのジャンルも多種多様になっております。そういう意味で、ある意味学園物の一般的な設定のシナリオのサウンドノベルはマンネリ化しており、真新しさを獲得するのは不得手であると言えます。ですが、このアマガミもそういった学園物・奇跡要素なし・全年齢対象でありながらこれ程まで支持を受けたのには理由がありました。それが本当の意味でも恋愛シミュレーションであったという事です。

 世の中の殆どのサウンドノベルは、恋愛シミュレーションと言っておきながら実は恋愛をシミュレートしている作品は殆どありません。途中の選択肢は各キャラクターの物語に入る為の分岐の意味が殆どであり、それらしい選択肢を選んでいけば自ずとルートに入る事が出来ます。また、裏ではちゃんとステータスが計算されていて選択肢の選び方で正しいルートに入るか否かの判断は行っているのでしょうけど、それが表面上には現れない為感覚としてはあくまで一本のシナリオであるという認識が強いと思います。もちろん、中にはヒロインとの出会いから主人公を相思相愛になるまでのシナリオに力を入れたものもありますが、結局は選択肢の積み重ねですので恋愛をシミュレートするというよりは一連のシナリオを楽しむという印象の方がしっくりくるのではないでしょうか。

 そんなマンネリ化しつつある恋愛シミュレーションを打破したのが、このアマガミのシステムにあると思います。このアマガミ、ヒロインが現在どのようなステータスなのかがリアルタイムで見えるのです。一日で取れる行動が最大4つあり、その結果を一日の終わりにまとめとして見る事が出来ますのでそれを踏まえで翌日の行動を考える事が出来ます。また、シナリオも選択肢の連続ではなくマップにあるイベントを自分で選んでいく方式です。これは、これまではテキストを読み進め選択肢が現れればその時考えるという受動的なシステムとは違い、自分でその都度どのイベントを見るかを選ぶという能動的なシステムとなっております。自分で積極的にイベントを選んでいかないと、ヒロインとの距離は全く縮まらないのです。

 さらに、イベントの中にはヒロインとの会話の内容を選ぶ事の出来るシステムも搭載されています。全部で9+1の会話カテゴリから自分で最適だと思う物を選択するというシステムです。もちろんその時の状況にそぐわない話題を選べは好感度は上がりませんしヒロインのテンションも落ちてしまいます。能動的にイベントを選択していくだけでなく、そのイベントの中でも積極的に話題を選んでいく必要があると言う事です。そして、そんな能動的な選択がメインのゲームという事で好感度の上下によって発生するイベントにも種類がたくさんあります。特に好感度をMAXまで上げた後のご褒美イベントは必見であり、自分自身が頑張って選択肢を選んできた見返りとしての意味もありその喜びも大きいかと思います。

 とまあこんな感じのヒロインのステータスの見える化と能動的な選択システムによって、文字通りの恋愛シミュレーションゲームとなった訳です。やはり、一般的な受動的に選択肢を選んでいくゲームはサウンドノベルとしての印象が強くゲーム性を感じる事は難しいですが、こういった能動的なシステムはゲーム性を強く感じる事が出来ますね。恋愛シミュレーションに何を求めるかでこのゲームの評価も大きく変わるかと思いますが、ゲーム性を求める人、真に恋愛をシミュレートしたいと考えている方には間違いなくおススメです。逆にシナリオを楽しみたいと言う人にはちょっと向かないと思います。

 ちなみに、このゲームが話題になった理由はこうしたシステム面もあると思いますが、そんなイベントの中で見る事の出来るシチュエーションにも原因はあります。このゲーム、ご褒美イベントを含め幾つかのイベントのシチュエーションが度肝を抜いています。言ってしまえば、コンシューマで全年齢対象である設定の限界に挑戦しているとしか思えません。そんじょそこらのR-18のゲームよりもよっぽど酷いです。そんな本物の恋愛シミュレーションをプレイしたい方に是非プレイして頂きたいですね。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<6人のヒロインを攻略してからが真のアマガミだったんですね>

 …とりあえず全てのヒロインをクリアしましたが、こんな形でプロローグの伏線とアマガミと言うタイトルの意味を知るとは思いませんでした。何だかんだ言って最後には爽やかな気分で終える事が出来たと思います。

 まずは、主人公ですが世界中の男性が真似するべき紳士ですね。最初こそ普通の恋愛シミュレーションかと思っていましたが、ご褒美イベントとか繰り返し見ているともうプレイヤーに対するご褒美という意味を超越してもう主人公が最強の紳士である事を表現する意味しか無くなってしまった感がありますね。まあそれでこそアマガミなのだと思います。このくらいの紳士具合で無いとこうまで人気にもならなかったでしょうからね。

 そして、冒頭でも書きましたがメインである6人のヒロインをクリアしてからがメインの始まりだとは思いもしませんでした。まあこれに関しては賛否両論あるとは思いますが、少なくとも私にとっては6人終わってからが本番でした。その理由ですが、アマガミの能動的な選択システムによって犠牲になってしまったヒロインのパーソナリティです。

 恋愛をシミュレートするという意味でこの能動的なシステムは大きな効果があったと思います。ですが、そのかわりとしてイベントの選択などが全て攻略のための選択という印象になってしまい、ヒロインのパーソナリティを感じる事が出来なくなってしまったという事です。実際、シナリオなんてあってないようなものです。出会いから始まり、距離を縮めていき最後には相思相愛になって終わるという流れはどのヒロインも共通であり、ヒロインに対して外見や第一印象のイメージ以上にパーソナリティ溢れる魅力を見つける事は難しいかと思います。多くのサウンドノベルは相思相愛になってからがシナリオの本番となっているだけに、ここで終わってしまうのは私としては物足りない印象でした。

 ですが、6人のヒロインをクリアしてから現れた隠しヒロインである上崎裡沙と妹である美也は何か違っていました。彼女たちも主人公と距離を縮めていくというステップを経るだけで後日談的なものが殆どないのは一緒です。ですが、出会いの段階で既にこの2人には大きな想いがあり、それが他のヒロインと比較してちょっとパーソナリティを感じる事が出来た理由にもなっております。特にプロローグの内容がこんな形で伏線として帰ってくるとは思ってもいませんでしたし、6人のヒロインに対する嫉妬と言いますかそんな心情もダイレクトに感じる事が出来ました。これは妹である美也に対しても同様で、家族である以上連内ではありませんがパーソナリティ溢れるイベントには愛着を感じました。

 正直なところ、6人のヒロインを攻略していく中で確かに能動的に選択していくシステムで飽きはありませんでしたが、流れはどのヒロインも大体同じですので先が読めると言いますか、1人目2人目程のワクワク感はありませんでした。ただ、ご褒美イベントを追いかける事に専念していた気がします。このまま終わっていたら何だかんだ言って凡作のイメージで終わっていたかもしれません。それを良い形で隠しヒロインと美也が閉めてくれました。

 とりあえず世間的に人気のある理由は良く分かりました。シナリオがあってないようなものですので、良く言えば重くなく大衆に広めやすいシナリオであり多くの創作家の意欲を掻き立てる事が出来るでしょう。シナリオではなくキャラクターで語る事が出来るゲームであると言う事です。そういったものを求めるとすればこの上ないゲームだったと思います。しかし私はやはり上崎裡沙と妹である美也が一押しですね。ヒロインにはやはりある程度のパーソナリティが必要なのだと思うのですよ。

 そういう意味で、もしかしたら今後私はこういった純粋な恋愛シミュレーションをプレイできないかもしれませんね。恋愛シミュレーションでなくても、シナリオが重厚なゲームの方が好きみたいです。それでも、たまにはこういったゲームも悪くは無いですね。


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